「久し振りの無頼派棋士」と呼ばれた田村康介四段(当時)

将棋世界1995年11月号、小林宏五段(当時)の「東西奨励会成績」より。

 9月14日~15日で、関東の奨励会旅行が行われた。

 コースは鎌倉の円覚寺で座禅体験後、フェリーで千葉に渡って鹿野山で1泊、2日目はマザー牧場で遊んで帰るというものだった。

 座禅体験は20年近く前の奨励会旅行でも行われたらしく、そんな話を聞いてこれは好手になるだろうと思い、計画してみた。座禅を組んだのは40分少々。説明その他を含めても約2時間の正ににわか座禅である。にわか座禅で何が変わる訳でもないが、姿勢を正すという行為は少なくとも悪手にはならない。参加した奨励会員はどう感じたか知らないが、個人的には満足いくものだったので、また機会を作ってみようかと今は考えている。ただ、落伍者が1人出たのは残念だった。新四段の田村である。やっぱり彼はバスの中に置いてくるべきだった。

 宿に着いてからは恒例の将棋大会。勝者には賞金を出すという条件で、級位者対有段者の香落戦なども企画してみた。さすがに有段者の壁は厚いが、それでも何人かは金星を挙げている。勝った級位者には大きな自信となったはず。

(以下略)

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将棋マガジン1995年12月号、「関東奨励会の修行旅行記」より。

将棋マガジン同じ号より。

 9月14、15日に関東奨励会の旅行が行われた。今回はこれまでの普通の旅行とは違って、”座禅”を組むという趣向。小林宏幹事の、「たまには厳しいのもいいでしょう」の一声で決まったものだ。

 初日の午前10時に、神奈川県鎌倉の円覚寺に到着。約15分の説法に始まり、45分の修行。33名の参加者には、それぞれに表情があった。

 その場面は撮影禁止のために写真を載せられないのが残念である。

 久里浜港より東京湾フェリーで浜金谷港に。マザー牧場に隣接する宿舎を目指す。到着後は将棋大会を行い、夕食会ではカラオケなどで大いに盛り上がった。

 2日目、台風の接近であいにくの雨。予定を変更して、午前中は将棋大会となったが、午後には回復して野外を散策。注目の的になったのはバンジージャンプ。みな足がすくんでか挑戦したのは小林幹事と田村四段の二人。やる前は緊張の色を隠せなかった二人だったが、終えると、「何だ、大したことないよ」と、急に自信満々に。この豹変ぶりが、回りを大いに笑わせていた。

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「ただ、落伍者が1人出たのは残念だった。新四段の田村である。やっぱり彼はバスの中に置いてくるべきだった」

どのようにすれば座禅で落伍できるのだろう。

とにかく、田村康介七段らしい武勇伝だと思う。

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「注目の的になったのはバンジージャンプ。みな足がすくんでか挑戦したのは小林幹事と田村四段の二人」

ここでも登場する田村四段(当時)。

登山家でアスリートの小林宏五段(当時)と田村四段の二人だけがチャレンジしたというのも、目に浮かぶような光景だ。

小林宏五段(当時)のバンジージャンプ。将棋マガジン同じ号より。

小林宏五段(当時)のバンジージャンプ。将棋マガジン同じ号より。

小林宏五段(当時)のバンジージャンプ。将棋マガジン同じ号より。

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このバンジージャンプはマザー牧場のものと思われる。

高さは21m、8階建てのビルの高さなので、かなり恐そう。

マザー牧場で空を飛ぼう(マザー牧場)

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田村七段が四段昇段を決めた1週間後の奨励会旅行だった。

「僕は今、幹事の小林先生が贈って下さった”久し振りの無頼派棋士”という言葉をすごく気に入っている」と「四段昇段の記」に書かれている。

田村康介四段(当時)の「四段昇段の記」