将棋世界1996年8月号、佐藤康光八段(当時)の第9期竜王戦1組〔対 塚田泰明八段〕自戦記「難解な一局」より。
この前、生まれて初めてであるが車の追突に遭った。と言っても私が運転してぶつけた訳でなく(そこまでヘタではなくなった気がするのでこれから同乗される方はご安心を)タクシーに乗っていたら突然後ろからかなりの衝撃がきた。ちょうど交差点でスピードを落として停止しようかという所だったのでバンパーがへこむ程度で済み良かったのだが、もう少しスピードが出ていたら危なかった。
どうも相手のドライバーが土地勘がなく、標識を見ながらの運転でやってしまったとの事らしい。幸いケガ人は出ず、大事には至らなくて良かった。
私にとっては、全く予期していない事が突然起こるとびっくりして一瞬、頭が空白の状態になるという事が良く分かった。
これは将棋でいえば「羽生マジック状態」(羽生先生失礼)とでも言うことになるのだろうか?
たまにはこういう経験も良い(何とも楽天的だが)かなと今では思っているが、これからしばらくは信号で停止する度に後ろを振り向く事になりそうである。
(以下略)
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「そこまでヘタではなくなった気がするのでこれから同乗される方はご安心を」
佐藤康光八段(当時)が、このように書いているのは、過去に次のようなことがあったから。
→佐藤康光前竜王の車に羽生善治六冠と森内俊之七段が同乗した日
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しかし、この翌年の先崎学六段(当時)のエッセイを読むと、盤石の運転技術にまでは決して至っていなかったようだ。
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「私にとっては、全く予期していない事が突然起こるとびっくりして一瞬、頭が空白の状態になるという事が良く分かった。これは将棋でいえば羽生マジック状態(羽生先生失礼)とでも言うことになるのだろうか?」
羽生マジックが繰り出された瞬間の衝撃度が実感できる。
見事な表現だと思う。
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「たまにはこういう経験も良い(何とも楽天的だが)かなと今では思っているが、これからしばらくは信号で停止する度に後ろを振り向く事になりそうである」
こういう経験も良いという楽観的な部分と、信号で停止する度に後ろを振り向くという全く楽観的ではない部分が同居しているのが、佐藤康光八段の面白いところだと思う。