佐藤康光八段(当時)「さすがに気が滅入るが、なにか良い厄払いの方法はないものだろうか」

将棋世界1997年1月号、佐藤康光八段(当時)の第68期棋聖戦〔対 内藤國雄九段〕自戦記「内藤自在流に完敗」より。

将棋世界同じ号より。

 今月は棋聖戦二次予選の内藤九段との一局を振り返ってみたい。

 リーグ入りの大きな一番である。

 私が大阪に遠征しての対局である。

 最近、大阪であまり勝った記憶がない。行く前に気になって調べてみると昨年12月に南九段に敗れて以来、なんと6連敗しているではないか。

 あまりにもヒドいが余計な物を見てしまい、イヤな感じがしながらの遠征となった。

(中略)

 振り駒で私の先手となった。

 将棋は相掛かりの出だしとなった。

 1図。この相掛かり腰掛け銀は最近私も愛用している戦法の一つだが、なんと言っても元祖本家本元は内藤先生である。恐らくもう30年以上、いろいろな定跡を確立されてこられた。大変なことである。

 私も2、3年程前、この戦法を指し始めた頃、この内藤流相掛かりを調べた時期があった。

 内藤九段は華麗なサバキが表立っているがその実、渋い指し回しも非常に多いという印象がある。

(中略)

 本局は序盤早々の軽率な一着が悔やまれる。▲8八角ならどういう展開になったのか、それが見られなかったのは残念であった。内容的には内藤流の自在の指し回しに完敗であった。

 これで関西遠征はまた1つ連敗が増えた。さすがに気が滅入るが、なにか良い厄払いの方法はないものだろうか。

 終わった後、観戦記担当の保坂さん、兄弟子の長沼五段と夕食をご一緒したが、保坂さんに「内藤先生、今日煙草吸われていませんでしたね」と言われてから私も気がついた。ひょっとしたら禁煙されているのだろうか。しかしそんな事も気がつかないとはちょっと自分が愉快に思えた。

 そういえば棋聖リーグは前々期3連敗でリーグ陥落した筈なのに前期もシードされ、ちょっと恥ずかしい気になったが今回はそのツケが回ってきたかな、と帰りの車中で思った。

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「行く前に気になって調べてみると昨年12月に南九段に敗れて以来、なんと6連敗しているではないか」

気になったことを調べないでおくと、それはそれで気になり続けるし、だからと言って、調べてみたらみたで、もっと気になってしまう結果となる場合もある。

なかなか難しい塩梅加減だ。

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「さすがに気が滅入るが、なにか良い厄払いの方法はないものだろうか」

オーソドックスに考えるなら、日本将棋連盟と縁の深い鳩森八幡神社でご祈祷してもらうということになるのだろうが、逆に鳩森八幡神社は全ての棋士に幸せをもたらすベクトルを持つ神社なので、自分に勝利の星が集まるようなお願いが叶うかどうかは何とも言えないところ。

一方、大阪でのことであれば、大阪の神社でご祈祷してもらう必要があるのではないかという考え方もできるわけで、やはり間合いのとり方が難しい。

そういう意味では、対局昼食時のメニューを変えてみる、宿泊するホテルを変えてみる、ようなことが手軽にできることなのかもしれない。

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佐藤康光九段は、勝ち続けている間は対局時の昼食メニューを変えないという時期もあり、また、1995年の「どんな縁起をかつぎますか?」という全棋士に対する質問には、「かつぐが秘密」と回答しているので、なんらか、大阪の対局での厄除けの秘策を、この後、見つけ出した可能性が高いとも思える。

 

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