NHKシリーズ第4弾。
私が初めて書いた観戦記から、
NHK杯将棋トーナメント2006年度2回戦の郷田真隆九段-先崎学八段戦の控え室の模様。
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対局前の控室、話題は視力だった。
「千葉さん視力はいいの?」
先崎八段が千葉女流王将に聞く。
「かなり悪いんですよ。外ではコンタクトですが家では眼鏡なんです」
「それは面倒だね。僕が受けたレーザー近視手術はお奨めだよ。どう、やってみれば」
「えっ・・・でもレーザー光線が眼球の底まで突き抜けそうで」
「今は心臓の手術だってレーザーを使っているんだよ。どうだ北浜君、やってみないかい」
眼鏡をかけている解説の北浜七段は
「いやー、心臓ならわかるんですが眼はちょっと」。
やはり眼鏡の郷田九段は微笑みながら聞いている。
先崎のいる控室は賑やかだ。
十数分後。リハーサルが行われているスタジオでは盤をはさんで両対局者が向かい合っている。
先崎は先程と打って変わってうつむき加減に厳しい表情で瞑想している。郷田は淡々とした感じで盤を見つめている。
これから始まる対局は、この5週間で3局目の郷田と先崎の戦いになる。5週間前の棋聖戦、10日前の棋王戦準々決勝、ともに郷田が勝った。
これで対戦成績は郷田の8勝1敗、先崎は郷田に分が悪い。棋聖戦は郷田の陽動振飛車、棋王戦は矢倉だったが、本局はどのような展開になるのか。記録係の許二段による振り駒は歩が3枚出て郷田の先手となった。
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この対局は郷田真隆九段の勝ち。
午前からの収録で、対局終了後のエピソードなどについては、また後日。