木村一基八段のユーモア

昨日の続きで、近代将棋2006年2月号、団鬼六さんの「鬼六面白談義 不心得者」より。

一ノ関の宿に着いて、カメラマンの弦巻、近将編集長の中野君達と一緒に夕食をすませ、温泉に入って、クラブで唄っていると、テレビレポーターの山田史生さんが挑戦者の木村一基七段と入って来た。私は木村七段と会ったのはこれが初めてであって、初対面の挨拶をすませてから、彼の人懐こそうな顔に好感を持ってつい聞いてみた。

「本日の封じ手、誰にもいわないから僕だけに教えてもらえませんか」

木村七段はギョッとした顔をしたが、すぐにニヤリとして、

「僕ならすぐ教えますが、生憎、封じ手をしたのは渡辺竜王の方なんです」

山崎エリが木村七段にいった。

「明日、フロントに十時に集まって平泉の中尊寺を見物に行きますが、ご一緒に如何ですか」

木村七段はまたギョッとした顔をして、すぐにニヤリとして、

「明日も将棋の続きを指さなきゃならないのです。行きたいのは山々なんですが……」

といった。

木村七段の眼からは私も山崎エリも将棋には全く縁なき衆生のように見えたのだろう。

そこへ先崎八段が来る、行方七段が来るでクラブ内はア~リャコリャで盛り上がり、カラオケ大会になったが、さすがに木村七段は明日の決戦に備えて早々に一人で去って行った。

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木村一基八段の誰にでも好かれる人柄がそのまま表れているようなエピソードだ。

近代将棋のこの号のカラーグラビアには、ホテルのバーで、団鬼六さんが先崎八段と行方七段とともに「ハイスクール・ララバイ」を唄っている写真が載っている。

「ハイスクール・ララバイ」は団鬼六さんのレパートリーでは決してなさそうなので、先崎・行方コンビに無理矢理ステージへ連れていかれた模様。

つづく