ガオーな一手(泉正樹七段)

将棋世界1999年7月号付録、「一生に一度の会心の一着&穴があったら入りたい究極の大ポカ」の野獣猛進流 泉正樹七段の項より。

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泉正樹1級(先)-植山悦行初段戦

【ヒント】

飛車が8四から4四へ移動。単に頭がバカなので、次の一手を大ポカと言えるかどうか。

【解答】

▲4一馬△8四桂

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以下、泉七段のコメント。

昭和52年5月6日の奨励会。一局目を敗れ、必勝を心して臨んだ初段昇段への2局目。

当時植山初段は、ガキマー(私の愛称)の兄貴分で荒みきった麻雀生活を共有していた。

盤に向えば友情など、紙ヒコーキ同然なのだ。ライバル心は燃えたぎり、好手、悪手、勝負手などなど、目をみはる印象的な手のオンパレード。当時16歳と19歳ですから元気で才能を感じさせる好局を展開していたのです。

「この忙しい局面で遊んでいる飛を活用するとは…」

▲4一馬は詰めろを確認して入りました。次の瞬間、私の心臓は確かに停止しました。口は勝手に「ホントかよ――」叫んでいました。

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8四にいた飛車が4四へ移動したわけだが、後手番の次の一手の問題なら△2四飛の「詰めろ馬取り」が正解なのだと思う。

△2四飛のような派手な手では、詰めろが背景にあることを悟られてしまうので、植山初段は△4四飛と指したのかもしれない。

泉1級が敵陣ばかりを見て読んでいたとしたら、自玉周辺には注意をはらっていない可能性がある。

その場その場の雰囲気での勝負の気合。

ユーモラスな棋譜ではあるが、奨励会のシビアさが出ている棋譜でもあると思う。