ゴキゲン中飛車をも超越する手筋。
将棋世界2000年5月号、鈴木大介六段の「鈴木大介の振り飛車日記」より。
竜王戦2回戦。対戦相手はあの羽生四冠でこれが初手合。
羽生四冠で思い出すのは四段に上がる少し前の頃、羽生さんを見る事が出来て、しばらくの間、僕は会う人会う人に「僕、この間”生羽生”を見ちゃった」と自慢していた事と、もう一つは「コンチャンご機嫌事件」である。
こちらの話はまず近藤・鈴木両三段を含め数人で記者室にいる所に羽生先生が入室して来たことから始まった。
今まで和気あいあいとしていた奨励会軍団だったが、”生羽生”の登場で空気が変わった。あぐらだった者は正座になり何とも言えない緊張感のまま、数十秒沈黙の時間が続いた…。
それを切り裂いたのは他でもないお喋り三銃士(◎近藤○木村一×鈴木が人気順)の一人、奨励会員の中でも最も危機感を感じさせない近藤三段で、その第一声にそこに居合わせた全員(羽生さんもそうだったと思う)が度肝を抜かれた。
「よう羽生さん! 元気かネ」
はっきり言って僕の様な小心者は少しチビった。羽生さんは静かに微笑むだけだった……。
とにかくそんな僕には遠い”生羽生”との記念すべき対局である。
まずは普段よりおとなしく▲4五角と筋違い角を放った。どうもえらい先生を前にすると僕はおかしくなってしまうらしい。
(以下略)
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鈴木大介六段の「鈴木大介の振り飛車日記」は、今読み返してみると、面白い話題が満載だ。
惜しむらくは、私がこの頃の将棋世界をほとんど持っていないということ。
近藤三段もすごいが、羽生四冠との初手合で筋違い角をやる鈴木六段もすごい。
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”生羽生”という記述がある。
以前、湯川恵子さんに聞いた話だが、湯川恵子さんが女流名人位戦の観戦(里見香奈現三冠の対局)をした時、某紙の記者が「”生里見”を初めて見ました」と感動しながら興奮気味に話していたという。
”生○○”は、将棋界特有のテクニカルタームなのかもしれない。