酔っ払いの将棋

ネット将棋の醍醐味、私の場合は、▲7六歩でウイスキーを一口飲み、△3四歩に対する▲7五歩でタバコを吸い始める。石田流党の私は、この▲7五歩の瞬間が最初の小さな幸せ。ウイスキー三口目のころ美濃囲いを完成させ二回目の小さな幸せ、石田流本組みになるか升田式石田流になるかを問わず、こちらから仕掛ける一手前に二本目のタバコを吸い始める。三回目の幸せ。ほろ酔い加減の頃、飛車を成って至福の時。そのまま好調に寄せまで行ければ理想的なのだが・・・

近代将棋2007年4月号、湯川恵子さんの「ケイコの道場日記 将棋寄席は大盛況」より、私の惨敗の一局を。

2008年まで、「近代将棋道場」という将棋倶楽部24の仕組みを使った実名で参加するネット将棋道場があった。

「ケイコの道場日記」は、湯川恵子さんが近代将棋道場で起こったエピソードなどを綴ったエッセイ。ネタが乏しい月は私がよくネタにされた。

 暮れの将棋寄席は今回も大盛況。浅草の木馬亭が満員だった。

 林葉直子さんはタロット占いのカード持参で出演し自己破産のことも明るく話してくれた。

(中略)

 新年を占うに相応しいのは2日の夜、酔っ払いの森さんに序盤で王手飛車を食らった一戦だ。

 ▲7六歩△3四歩▲2六歩△3五歩▲2五歩△3二飛▲2四歩・・・

 自然な手順のつもりだったが以下△2四同歩▲同飛△3六歩▲同歩△8八角成▲同銀△1五角で、下図。

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 私は極めてシラフだったし、どこを間違えたという自覚がない。なぜなぜ?という気分だ。知らぬ相手なら当然ここで投了したいけど、森さんは将棋ペンクラブの仲間。いつも指してくれる嬉しいお相手だ。

「ペンクラブの新年会、20日でしたね、高田宏会長もご参加なさるそうで楽しみですね」

 とチャットを入れて▲6八玉。

 むろん飛車の丸損となった。

 続いて▲6五角と打ったら△5五飛▲4三角成△5七飛成(王手)から△4七竜(馬金取り)と、とんでもない事態を招いた。

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「高田会長、素晴らしい先生です」と彼が書いてきた。

「日本の知性の代表みたいなね」と返事したら、

「ヤクザ映画がお好きです。昭和残侠伝と総長賭博は傑作だとうかがいまして僕もビデオを借りて観ました」

 盤上を彼はどう思っているのか。詳しくヤクザ映画を語ってくれる。聞きながら迎えた66手めが、下図。後手玉には詰みがある。

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「ぁぁぁ・・・」と来た直後の言葉はヤクザ映画には全然関係ないだろう。

 ペンクラブ新年会で高田会長から私が聞いたお勧め映画は、「初恋の来た道」、「あの子を探して」、そして韓国映画の「友へ親旧」だった。今年も楽しい年になりそう。

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真ん中の図の△4七竜までの22手で必勝形。すごい必勝形。

▲1六馬の一手だが、そこで△5七角成とでも指しておけばよかったのに、酔っ払っていた私は違う手を指してしまったのだろう。

どういうふうに指せば、44手をかけて二番目の図から三番目の図になるのか。

自分で指しておいて信じられない。

たしかに、私が尊敬する高田宏会長(当時)の話や「昭和残侠伝」の高倉健さんや池部良さんのことを対局中にチャットで熱く語ったのは憶えている。棋譜は忘れている。

それにしても最終図である。

△6四香など意味のない手だし、完全に指し切りになっている。なおかつ必至。

女流アマ名人を5回獲得した湯川恵子さんの中終盤の物凄い腕力と、酔っ払いの私の不甲斐なさが交錯した一局だったと言える。

自分が可愛くなるくらい、情けない将棋だ。

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高田宏さんお薦めの映画の一部

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