今期のA級順位戦最終局で、丸山忠久九段が頭頂部に冷却ジェルシートを貼り付けて対局をしたことが話題となった。
中原誠十六世名人が、この丸山新手に感想を述べている。
週刊新潮最新号「気になる一手」より抜粋。
なかでも面白かったのは渡辺-丸山戦と森内-久保戦だ。どちらも挑戦と降級がからんでいた。
終盤で丸山さんは頭に白いものを載せ冷やしている。こんな姿は初めて見たが、効果はあるのだろうか。たしかに体全体が熱くなるものだが……丸山さんが難局を制して残留を決めた。
冷却ジェルシートの効果を真剣に気にしているところが、いかにも中原十六世名人らしい。
—–
ところが、21年前に丸山新手の原型となるような手筋を使った棋士がいた。
将棋マガジン1990年3月号、河口俊彦七段の「対局日誌」より。
(1989年12月22日 午後8時 B級1組順位戦)
大広間では森安-田丸戦が終わった。後のない一番だったが、森安が勝った。そのとなりの、石田はうなっている。アイスノンを鉢巻き代わりにしているのには笑った。頭は冷えるだろうけど、はたして体にいいのかしら。
昔の話だが、エジソンバンド、というものがあった。ブリキをハーモニカみたいに作ってバンドをつけ、ひたいに巻くのである。エジソン、というから、それを用いれば同じくらい頭がよくなるのだろう。間宮久夢斎七段が愛用していたが、成績は上がらなかったようである。
(午後11時)
島が勝ち、中村は関根に完敗だった。追い上げたここで負けるとは思わなかった。どうもたよりない。アイスノンの効果もなく、石田は負け。いつの間にか真部が二番手に上昇している。
(以下略)
—–
アイスノンで頭を冷やしていたのは石田和雄八段(当時)だった。12月の寒い時期のアイスノンだから、頭を冷やすことだけを目的として用意されていたのだと思う。
いかにも石田和雄八段らしい。
この頃、丸山九段は奨励会三段の時代。
エジソンバンドを愛用していた間宮久夢斎七段について興味のある方はこちらの記事を→入玉の鬼、間宮久夢斎六段