全く正反対の天才二人

全くタイプが異なる同時代の二人の天才。

ちょうど180度違うと言っていいかもしれない。

—–

近代将棋2001年1月号、青野照市九段の「実戦青野塾」より。

 同じくらいの才能を持ちながら、まったく正反対の方向へ進む二人というのは、どの世界にもよくあることかもしれない。

(中略)

 かつて故・芹沢博文九段は、

「中原も才能はオレと同じ程度だったんだ。ただ中原は、将棋がいかに難しく深いかを、早いうちから知っていたのに、オレは将棋はやさしいと思っていた。その差なんだ」

と言っていた。中原を誉めると同時に、自分に対する自嘲の言葉でもあった。

 奨励会時代、記録係をやってくれと幹事の先生に頼まれた芹沢が、

「自分より弱い人の記録はとりたくありません」

と言ったという話が伝わっているくらいだから、若いころから将棋の強さ、才能ということに関しては、よほど自信を持っていたにちがいない。

「オレは酒を飲み、バクチをやり、女も抱いて名人になる」

 その言葉どおり、芹沢は24歳の若さで、A級八段に昇った。しかし、芹沢の輝かしい時代はそこまでだった。芹沢に残る棋歴といえば、A級2期というくらいのものである。

 それにくらべ、同じ時代を生きた加藤一二三九段(芹沢のほうが年長で、棋歴は加藤が上)は、A級を30年以上続け、いまなお60歳を超えてA級の座にいる。まさに対極の二人といえる。

 同じ時代を生きたといっても二人の間に完全な実力差があったなら、これは比べてもおもしろくもなんともない。

 しかし対戦成績は7勝7敗と五分であり、しかも芹沢の将棋が多少荒れてきたと思える昭和50年代に、持ち時間を目いっぱい使って加藤を負かしていることが、芹沢のこの相手に対するライバル心を感じさせられる。

 芹沢のすさまじい光景を見たことがある。対加藤戦で、午前中から一手ごとに控室に来てうずくまり、「ハーハー、ゼイゼイ」やっている。対局の前日にもかかわらず、大酒を飲んだのだ。

「加藤はバカだ。どんどん指せば投げて帰るのに。夕方まで長考していたらもう許さんぞ」

 二日酔いはどんなに苦しくても夕方か夜になれば治る。その苦しい間に帰してくれなければ許さない、というわけである。このとき、加藤がそういう相手を見てどんどん早指しで指せば実際に芹沢は投げて帰ったであろう。

 しかし、そういうことをしていたら今日の加藤はない。

 相手が誰であろうと、体調がどうであろうと、盤上の最善だけを追い求める姿勢があるからこそ、いまなおA級にいるのである。

 将棋は夕方になって体調を持ち直した芹沢が、時間いっぱい使って加藤を倒した。その迫力にいたく感動した覚えがある。

(以下略)

—–

NHK杯トーナメントでの芹沢八段(当時)の解説は、子供心にも面白かった。

芹沢九段はAB型。

しかし、羽生善治名人、森下卓九段、木村一基八段、米長邦雄永世棋聖などもAB型だ。

身近なところでは、アカシヤ書店の星野さん、元近代将棋編集長の中野隆義さん、フォトジャーナリストのみみマルコさん、私。

血液型で気質を体系化することが非常に難しいと痛感する局面だ。

—–

若い頃に二日酔い六段の経験を持つ私が選ぶ、二日酔いを解消するために有効な食べ物・飲み物。

・リンゴジュース

・スポーツドリンク

・かき氷

・ローヅカツ定食

一見良さそうで、実はもっと苦しくなる食べ物・飲み物。

・柑橘系ジュース

・炭酸飲料

・バニラアイスクリーム

・ざるそば等のあっさりしたメニュー