「勝負と文筆は感覚がかなり相反するものだから、先崎にどう作用するかが興味深いところだ」

近代将棋1992年2月号、「第50期順位戦」より。

C級2組

 1敗組は半分に減った。先崎と丸山が残った。全勝が2人いる時の1敗者は勝っても息つく暇がない。あとひとつでも負けたらおしまいだというその緊張感は、昇級よりむしろ降級感に似ているものがあるだろう。

(中略)

 先崎は文筆業に復帰した?

 将棋世界誌はよほど期待をかけているようであちこちに広告していた。『先崎学、沈黙を破る―新連載・先チャンにおまかせ!』

 勝負と文筆は感覚がかなり相反するものだから、それがこの表の先崎にどう作用するかが興味深いところだ。まあ先チャンの場合、書く時間を取ると飲む時間が減って好材料かもしれない。

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残り3戦を残すタイミングでの記事。

この後、全勝者(有森浩三六段、石川陽生六段)は2勝1敗、1敗の丸山忠久四段が3連勝で、9勝1敗の3人がC級1組へ昇級することになる。

先崎学五段はここから2勝1敗(1敗は杉本昌隆四段に喫したもので、8勝2敗の次点。

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先崎五段は前年の5月に1年間の休筆宣言をしていた。

休筆宣言の直前の記事は、次の素晴らしい観戦記。

細かい事情は明らかにはなっていないが、逆に言えば、この記事が休筆宣言をしなければならなくなったきっかけとなるものだったとも推察される。

先崎学五段(当時)渾身の観戦記「偉大なる虚像」(前編)

先崎学五段(当時)渾身の観戦記「偉大なる虚像」(中編)

先崎学五段(当時)渾身の観戦記「偉大なる虚像」(後編)

『先崎学、沈黙を破る―新連載・先チャンにおまかせ!』の1回目は次の記事。

過激な編集企画

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「まあ先チャンの場合、書く時間を取ると飲む時間が減って好材料かもしれない」

書く時間の分、そのまま飲む時間が減るとも思えず、一般的には睡眠時間が減るだけなのかなと思う。

ただし、どのような状況でも心置きなく寝る人であれば、飲む時間がたしかに減るかもしれない。

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将棋世界1992年1月号より。撮影は弦巻勝さん。