深浦九段と木村八段の粘り強さ

2011年10月7日対局分までの通算勝率トップ10は次の通り。(日本将棋連盟ホームページ、対局数300局以上)

羽生善治二冠 1157勝448敗 0.7209

渡辺明竜王・王座 380勝179敗 0.6798

山崎隆之七段 431勝206敗 0.6766

木村一基八段 465勝232敗 0.6671

深浦康市九段 678勝348敗 0.6608

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今日は、深浦九段と木村八段の勝率の高さの話。

将棋世界2005年10月号、河口俊彦七段の「新・対局日誌」より。

 これをきっかけに、しばらく投了談義でにぎやかになった。

 藤井九段曰く「負けと知って投げないで指すのは辛いんだよね。一度でも、そうやって拾い勝ちした経験があれば別だけど」

 ところで、棋士の通算勝率を見ると、仮に規定対局数を三百局以上として、七割を超えているのは、羽生四冠、深浦八段、木村(一)七段の三人しかいない。いつも勝ちまくっている佐藤棋聖、森内名人も、六割台の半ばである。七割以上が、いかに高勝率かがわかるが、羽生四冠はともかく、深浦八段、木村七段の高勝率を意外に思われる方もいらっしゃるだろう。それにしては、タイトル戦出場が、深浦一回、木村はなしとは不思議だ。もっとも深浦八段は、朝日オープン優勝その他、優勝回数は多い。

 そんなに勝っている二人に共通しているのは、なかなか投げないこと、と言った人がいる。なるほど、藤井九段が実力の割りに、勝数がすくなく、勝率が低いのとを合わせて考えると、話が合う。

 22日の順位戦の日、木村七段に、投げっぷりの話をしたら「私は特別投げっぷりが悪くありませんよ。ただ勝つときもたもたするだけです」と、私達が思っているのと正反対の答えだった。

 そして深浦八段についても「よく粘るのはたしかだけど、特に投げっぷりがわるいとは思いません。それより、駒の損得を異常なほど気にする、とは感じますね」

 こういった話は、深浦将棋を見る上で参考になる。

(以下略)

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木村一基八段は、15歳で二段という非常に順調なコースだったが、三段になるまでに2年半かかり、三段リーグには6年半在籍して、四段になったのは23歳の時だった。

一方、深浦康市九段は、C級2組からC級1組に上るのに5年かかっている。

二人の共通点は、三段リーグまたはC級2組で苦労したという点。

この苦労が、粘り強い棋風となる土壌になったのかもしれない。