将棋マガジン1988年2月号、神吉宏充四段(当時)の「何でも答えまっせ!!」より。
Q.事件発生
ボス、事件発生です。来年の将棋カレンダー2月のところを見て下さい。谷川グループの皆さんがボールを持って撮影しとるんはええんですが、浦野五段ひとり、外の方向へ視線がいっとるんですわ。一緒におったボス、なぜかわかりませんか?
<横浜市 Bさん 14歳>
A.新・太陽にほえろ
おう、テキサスどうした。何ぃ、カレンダーだとぉ? ふんふん、やっぱり中森明菜は可愛いのう。おっと違った、こっちの将棋カレンダーか……。はっはあ、確かにマッチが一人横向いとるなあ。それじゃあヤマさんに推理してもらおう。
ヤマ「ボス、考えられる事は三つ。一つは可愛い女の子が横にいた。二つめはボールが重たくてアエいでいる。そして三つめは寝違いで首が回らない。どれでしょうか」
「よしわかった。ゴリさん、浦野五段のウラを取ってくれ」
ここで「太陽にほえろ」のバックミュージックが流れる。しばらくしてゴリさんが血相を変えて登場。
「ボスわかりました! 浦野五段は女の子を見ていたそうです。とうとう本人が自白しました」
大都会の片隅で、また一つ大きな事件が片付いた……。
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私自身のことを振り返ってみると、心に余裕がない時は、街角ですれ違う女性や同じ電車に乗っている女性の顔が目に入らないことが多い。物理的な視野が狭くなっている状態だ。
心に余裕がある時は、すれ違う女性を一瞬見ながら、「おっ」と思ったりすることができる。
この期の順位戦で浦野五段(当時)は8勝2敗と好成績を収めるが、頭ハネで昇級ならず。翌年に見事B級2組に昇級を果たす。
「好調な時は、女性をついつい見てしまう」
これは、ひとつの真理なのではないかと思う。
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15年前の話。
サンフランシスコの街中を歩いていた時、前方から金髪女性がやってきた。
ブロンドというよりも本当の金色。
「さすがアメリカ。金髪の色が違う。このような鮮やかな金髪なんて日本じゃ見ることができない」
当時は、”ガングロ”女子高生が日本を席巻していた頃で、街を歩くと銀髪の山姥のような若い女性が珍しくなかった。
金髪は、かえって新鮮だった。
しかし、その女性とすれ違った時、私は何とも言えない微妙な気持ちになった。
彼女は日本人だった・・・