将棋マガジン1992年12月号、「公式棋戦の動き」より。
〔王将戦〕
二次予選がすべて終了して第42期王将リーグが開幕した。
今期も若手ベテラン共に実力者揃いのリーグ戦で前期に引き続き、ハイレベルの挑戦者争いが行われることは必至と思われる。
図はオープニングゲームの一回戦、羽生棋王-森内六段戦。
対局時の食事を一緒にとりに出るほど仲の良い二人だが、盤を挟めばまったく別。
流石にライバル同士の対戦とあって、両者譲らず二度の千日手を含む三局目の将棋である。
図以下の指し手
△3九銀▲3八飛△4八銀打▲同飛△同銀成▲同玉△8八飛
終始リードを奪っていた森内だが、中盤に一失があり、図では羽生が逆転に成功している。
銀取りを放置して△3九銀が鋭い一着。以下飛車を奪って△8八飛の王手馬取りまで一連の好手順で、粘る森内を一気に突き放した。
感想戦を終えると時刻は朝の四時を過ぎていた。
始発が動くまでと千日手局の感想戦を始めた二人の顔に疲労といったものは微塵もなく、将棋が楽しくてたまらないといった感じで延々と検討が続けられた。
二人の若さと情熱には、まったく声も出ない。これが才能というものなのだろう。
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対局者同士が一緒に昼食に行くのは非常に稀なことで、それほど仲が良いということになる。
当時では、中井広恵女流名人と林葉直子女流王将も、対局時に一緒に昼食に行っており、この二人の仲の良さも有名だった。
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感想戦が午前4時に終わって、普通なら、一緒に新宿に出てビールを飲みながら焼肉、あるいは、築地へ出て、市場の場内の寿司店へ行ってビール、というところを、千日手局の検討。
記事にも書かれているように、若さと情熱が素晴らしすぎる。