丸山忠久名人(当時)「郷田さんとは年齢も近く四段昇段が同期という間柄 」

将棋世界2001年5月号の、アサヒスーパードライの広告「キレ味。この一手。 第8回 丸山忠久名人」より。

挑戦権獲得の一番

 第58期A級順位戦最終局で郷田真隆八段と対戦した。郷田さんとは年齢も近く四段昇段が同期という間柄。

 この最終局は私が勝てば名人への挑戦権を得ることができるが、負けるとプレーオフに持ち込まれてしまう可能性のある大きな一番だった。

 私の中座飛車に対し、郷田さんは金銀で飛車を押さえ込みにきたが、中央の折衝でうまくペースをつかんだと思った。

 図は郷田さんが5四の歩を金で払ったところ。

 以下、本譜は▲7四歩△同金▲5一角成△同玉▲4三飛成△5三金▲5二歩で郷田さんが投了した。▲7四歩~5一角成!が決め手。角を成り捨てて玉を下段に落とし、飛車が成り込んでの寄せはキレがあったと思う。

 投了した▲5二歩の局面は私の玉が安泰、一方の郷田陣は△5二同金は▲3二竜だし、△5二同飛も▲同竜△同金▲7一飛で収拾がつかない。

 プレーオフに持ち込まれずに挑戦権を得ることができ、ほっとした一局だった。

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広告的には▲7四歩△同金から▲5一角成としたA図の方が絵になるのであろうが、やはり将棋的には▲7四歩から解説してもらったほうが有り難いし、キレ味のある一手であることがもっと理解できる。

A図から△5三玉もあるが、そうすると▲6一馬とされて4三の銀取り、かつ次の▲7一馬の王手飛車取りが受からず、後手はもっと大変なことになってしまう。

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丸山忠久九段と郷田真隆九段は四段昇段が1990年4月1日と同じ日で、学年も同じ。

将棋マガジン1990年5月号には新四段になった二人の写真が載っている。

丸山忠久四段(当時)のVサインという非常に貴重な写真。