藤井猛九段とウルトラマン

将棋世界2003年7月号、巻頭コラム「一手啓上 第7回 藤井猛」より。

 子供が幼稚園に通い始めた。男の子に人気なのがウルトラマンとアバレンジャー。「明日は◯◯君に負けないぞ!」と、毎日戦いごっこに夢中になっている。もちろん大きくなったらウルトラマンかアバレンジャーになるつもりだ。

 先日アバレンジャーショーに連れて行った。アバレンジャーと握手したり写真を撮ったり大喜び。ショーは大人が観てもなかなか面白い迫力あるものだった。子供は真剣そのもの。アバレンジャーショーが悪党にやられそうになると、頭の血管が切れるんじゃないかと思う程顔を真っ赤にしてカンカンに怒っている。持参の剣を抜き銃を撃ち、「俺がやっつけてやる!」と闘志満々。

 男は子供の時から同じだ。変わらない。熱い闘いが好きだ。ヒーロー(私はこの言葉はあまり好きではないが)が好きだ。私もウルトラマンになりたかった。ウルトラマンにはなれなかったが、将棋指しになった。盤上の熱い闘いに魂を燃やしている。だが、鬼気迫る形相の子供の横顔を見て思う。最近これ程まで血が騒ぐような勝負をしただろうかと。熱意も意欲も変わっていないのに、喜怒哀楽がマヒして来たのだろうか。

 ウルトラマンが好きだった。巨人の星が好きだった。私はまた熱いヒーローを目指そう。熱い勝負に燃えよう。

 熱い夏はもうすぐだ。

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この文章は9年前のものだが、羽生善治王位に挑戦している現在の藤井猛九段が書いている、と言われても全く不思議ではない雰囲気だ。

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「ウルトラマン」は1966年から1967年まで放送された番組。

その後、ウルトラセブン(1967年)、帰ってきたウルトラマン(1971年)、ウルトラマンA(1972年)、ウルトラマンタロウ(1973年)、ウルトラマンレオ(1974年)、ウルトラマン80(1980年)・・・と続く。

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「巨人の星」は、1968年から1971年まで放送されたスポーツ熱血根性アニメ。

藤井猛九段は再放送を見て大好きになったと思われる。

一球投げるのに20分かかることもあるような熱いドラマだった。

泣けるシーンも結構多かった。

あの時代、ウルトラマンも星飛雄馬もヒーローだった。

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爆竜戦隊アバレンジャー』は、2003年2月から2004年2月までテレビ朝日系列で毎週日曜午前7時30分から8時00分に放映されていた特撮テレビドラマ。

テレビ史的には、『秘密戦隊ゴレンジャー』から始まった”スーパー戦隊シリーズ”の第27作となる。

アバレッド(アバレマックス)、アバレブルー、アバレイエロー、アバレブラック、アバレキラーの5名による戦隊だった。