1995年の奨励会

将棋マガジン1995年6月号、関東奨励会幹事だった中村修八段(当時)による「スポットライト奨励会」より。

 四カ月に一度、勝率賞および連勝賞の表彰を行なっている。今回の勝率賞は渡邊の20勝4敗が断トツの一位だった。彼は6連勝で2級に昇級したのだが、驚いたことに、昨秋6級で入会後、ほぼ半年で4階級昇進を決めたことになる。まだまだあどけなさの残る小学生だが、これまで2連敗が一度しかなく勝負強い。このペースでいけば小学生棋士誕生もあながち冗談とはいえないだろう。何れにせよ、森下八段が「大山先生に似ている」といっているように注目される存在となってきた。そんな彼に刺激されてか、同じ所司門下が頑張っている。松尾、宮田、後藤(元)がそれぞれ昇級を決め、いい意味で闘争心を燃やしているようだ。

 一方、渡邊とは同期入会ながら明暗を分けた形になり、7級に落ちてしまった田中だが、ようやくスタートラインに戻ってきた。中学生ながら記録係などを積極的にこなす頑張り屋だけにこれからが楽しみだ。

 さて、今年も数名のファンの方からの援助で奨励会トーナメントが行われた。自由参加による総平手のトーナメント。抽選の結果、中には三段対7級などの組み合わせもあり、普段指す機会のない相手に教わることは良い勉強になったはずだ。幹事としては沢山の番狂わせを期待していたのだが、終わってみるとやはり厳しい三段リーグを戦っている4人がベスト4に残った。優勝は木村(一)、クジ運の良い(?)彼は一回戦からすべて三段と当たる6連勝。前期、前々期と三段リーグでは後一歩の成績が続いている木村(一)だが、着実に力をつけている。今期も本命視されるだろう。

 新年度がスタートした。4月4日の例会に、晴れて新四段となった北島が姿を見せ、「奨励会のために」と真新しい駒を二組贈ってくれた。こんな心遣いはなかなかできることではない。大切に使わせて頂こう。

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ここに出てくる「渡邊」は、10歳の頃の渡辺明竜王。

渡辺少年が大山康晴十五世名人に似ている、と初めに言ったのが森下卓九段であることがわかる。

松尾歩1級は15歳、宮田敦史3級は13歳。

「後藤(元)」は、現在の観戦記者の後藤元気さん。4級16歳。

「田中」は、現在の囲碁将棋チャンネルの田中誠さんで当時13歳。

15歳だった矢内理絵子女流四段もこの頃は7級に落ちている。

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木村一基三段は21歳で三段リーグは2位の頃。

四段になるのはこの2年後のことになる。

”クジ運の良い(?)”と書かれているということは、当時の木村一基三段は普段もクジ運が良くなかったのだろうか。

北島忠雄四段(当時)、とても格好いい。