将棋世界1990年8月号、中村修七段(当時)の「プロのテクニック」より。
将棋で一番疲れるのはどの様な負け方でしょうか?
優勢を逆転された場合。違う。
トン死、あるいは詰まし損なった場合。これも違う。
正解は、序盤で作戦負けになり、そのまま一方的になるのならまだ諦めもつくが、やや不利の状態から一手の悪手もないのに差を詰められず、負けるパターンである。
野球にたとえると、1回に1点を取られて0対1で負ける、いわゆる”隅1”というやつ。あれもつらいと思う。
どうせなら、少し苦しい局面から攻め合って足りなければまだ納得が行く。
だから谷川さんや塚田君にはストレスがたまりにくい(これは冗談)。
しかし、朝の10時から一日中攻められっぱなしで、つぶされない様に我慢しながら手数と時間を費やし、結局いい所なくやられてしまい、おまけに感想戦までも2度3度と負け続け、深夜、タクシーが拾えず歩いて帰っていく。これは疲れる。
「どうせだめなら早く投げれば良かった」こんなふうに考え出すと悪循環につながってしまう。
楽をしようという気持ちがあっては勝負に勝てるはずはないから。
(以下略)
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将棋と恋愛は似ている。