近代将棋1991年2月号、林葉直子女流王将企画、「島朗七段とおしゃべり90分」より。
この頃の近代将棋では、月替りで棋士が編集長を務める企画となっており、2月号の”今月の編集長”は林葉直子女流王将(当時)。
林葉編集長の企画の一つがこの島朗七段(当時)との対談だった。
中原先生って、素敵
島 女流王将が床の間に座ってよ。
林葉 あら、いやだあ。
島 だって、編集長でしょ。
林葉 上座に座るのはおかしいわ。
島 そんなことにこだわるのは古いんですよ。とにかくそうしましょう。
林葉 はい。
(少し、もめて席につく)
島 林葉さんは将棋界で憧れのまとですね。
林葉 はーあ。
島 男性の棋士でいいなあ、という人は誰ですか。
林葉 中原先生。将棋を教わりたい。一日いっしょに将棋やりたい。
島 なるほど、そうでしょう。
林葉 幸せですよね。目の前に中原先生がいて、じっと顔をみられたらいいんじゃない。
島 お願いしてみたら、いいんじゃない。
林葉 そんなこと恥ずかしくって。
島 名人は笑顔がすばらしいですね。
林葉 そう。真剣に戦っているときのお顔もいいですねえ。私じゃあ、将棋にはなりませんけど。
島 お話したことないの。
林葉 お電話であります。
島 あっ、そうなの。
林葉 南先生のところから、女流の人たちと一緒に。
島 女流の人たちは仲がいいですね。
林葉 でも、将棋を教わりたいわ。
島 谷川さんじゃ駄目ですか。
林葉 いや、もちろんそういうことになれば嬉しいですよ。
島 塚田君じゃ、どうですか。
林葉 いえ、そんな・・・。(笑)
島 塚田君なら指してくれますよ。しかしタイプが違うからな。
林葉 中原先生とは何局ぐらい指しているんですか。
島 ぼくですか。15回ぐらい・・・。
林葉 えーっ。初めて指したときって、緊張しませんでした。
島 しました。
林葉 ほんとに、えーっ。
島 対局態度が立派ですよね。
林葉 あーっ。中原先生ってユビがきれいでしょ。見たりすることないですか。
島 そんなことはないですよ。
林葉 大山先生もきれいでしょ。
島 よくわかんないですよ。
林葉 大山先生とは何局ぐらい・・・。
島 3局ぐらいですけど、超人のことはよくわからないですよ。
林葉 大山先生だから、こういう手は指しちゃいけないとか、思います。
島 そういうことはないですね。林葉さんはどうですか。
林葉 します、します。割りといっぱいするんです。こう指そうかなって思ってるときに大山先生が見にきたとか、そしたら大山先生が見ているから、恥ずかしいから、もうちょっといい手を指そうかなとか。すごく見栄っ張りだから。いいとこ見せようと思うと、変な手を指しちゃいます。
どうして、ぼくを
島 きょうはなぜ、ぼくを対談の相手に選んだんですか。
林葉 適齢期の人が多いから、島情報を教えていただこうと思って・・・
島 ははは、そっちの話ですか。結婚しちゃったから独身の人たちとのつき合いが少なくなったから、島情報はないんですよ。実は・・・。
林葉 島先生は女性と将棋について、いろいろ言われていますよ、ね。
島 そっちのほうの敵討ちですか。
林葉 島先生のイメージって、つくられたものがありますよ、ね。
島 自分でつくったんですよ。
林葉 しゃべってみると、違いますよ。
島 前に女流棋士の批判を言ってるものですから、恨みをかってると思いますよ。
林葉 そういうことを聞いているときはカチンときましたね。あいさつだけはしてましたけど。
島 それは感じてましたね。そうでなくても、おしゃべりする機会ってないものね。
林葉 おととしぐらいの大阪の将棋まつりでしたか。いっしょに仕事をやらせていただいて、そのときおしゃべりしたら、島先生って全然違うじゃないか、みたいな・・・。
島 女性は将棋は駄目だというようなことを言ってましたから、女流からみれば気持ちのいいものじゃないですよ。
林葉 あんまり覚えてなくっても、口からボロッと出たことを記者の人が書いちゃうから。
島 そうそう。
林葉 そんなこと言ったかな、って感じで。
島 人間って、言われたほうはしっかり覚えてますからね。
女性観を聞かせて
林葉 今日は島先生の女性観をたっぷりうかがいたいと思っています。
島 ぼくは無口で有名ですから、屋敷か島か、と言われているくらい。
林葉 そんなの聞いたことありませんわ。(笑)
島 女性の特質について、研究しはじめましたから。
林葉 そんなこと研究してどうするんですか。(笑)
島 結婚式なんかで、同僚の女の子が泣いたりするでしょう。こういうときは自分をオーバーラップしてると思うんですね。
林葉 私もはやく結婚したいな。幸せになってほしい。もらい泣きすることがありますね。
島 そういうところが、女性らしい考えかたなんでしょうね。
林葉 奥さんと女流棋士とはどう違います。
島 ぼくは家庭のことは、こういう場では話をしないことに・・・。(笑)
林葉 それでは女流棋士を一般女性と比べますと・・・。
島 ひとことで言うと、男性関係が非常に清潔ですよね。
林葉 そうですね。
島 男99パーセントの世界だから、虫がつきやすいと思われがちなんですが、逆なんですね、大学でも共学のところより女子大のほうが危ないんですよ。サークルなどで・・・。
林葉 あーあ、うん。
島 アメリカなんかは女子大がつぶれているのね。社会の波に押されて男の子を入れてるんですよ。
女性への将棋普及
林葉 女性に将棋を教えたりします?
島 個人的につき合ってる女性には教えたことはないですね。
林葉 どうしてですか。
島 やっぱり将棋を覚えて自分のことを知られるのはいやだし、闘争的な面が出てきたらいやだし、ほかのゲームはやりますから、こういうのは言行不一致なんでしょうね。
林葉 大いに将棋を広めてもらわないと困りますよ。
島 棋士はみんな将棋連盟のテーマとして”女性に将棋の普及を”と言っているんだけど、いざ、個人レベルになると、そうはいかないようですね。
林葉 なるほどね。
島 どうなんだろう。男性棋士のなかで積極的に自分の親しい女性に将棋を教えている人がいるかしら。
林葉 そういえば、いないような気がする。
島 棋士であるということで、つき合っていても、教えるということはなかなかできない。普及の面では困ったものですけれども。
何とか、努力しないと・・・
林葉 最近は将棋指す人が減ったでしょ。大学生がやらなくなったり、将棋盤が家庭になくなってきましたね。
島 少なくなりましたね。ニューファミリーで将棋をやるなんて、いないよね。ぼく自身はそういう点で努力してないからいけませんね。
林葉 そういう言い方、誤解されやすいタイプじゃないですか。
島 そうかもしれない。自分でも自分のことわからないし、将棋の普及についても、ファンが高齢化しているので、何とか努力をしなければ、ということは思っていますよ。
(つづく)
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林葉直子女流王将(当時)の血液型はB型。
島朗七段(当時)の血液型もB型。
B型はマイペースとよく言われるが、この対談も、お互いに、微妙に話が噛み合っていないところがとても面白い。
明日の続編も、ご期待ください。