将棋世界1991年11月号、蛸島彰子女流五段のJT将棋日本シリーズ’91女流リレーエッセイ「静かに しかし 鮮烈に」より。
JT日本シリーズ’91熊本での、谷川-羽生戦の聞き手を仰せつかった。現棋界で望みうる最高の組み合わせ、仕事でなくても自費ででも見に行きたくなる。
遠足に行く前の小学生のように当日を楽しみにしていたが、何と当日は台風の接近で怪しい空模様、やきもきしていたが結局、便を1時間早めて、無事熊本に到着。
前日祭での谷川、羽生両先生は、とてもこれから大きな戦いをする者同士とは思われないほど静かで自然の振る舞いの中に、スーパースターといわれる人が持つ、独特の雰囲気をかもし出しておられた。
前日祭後、皆で「飛車角」という焼き鳥屋に行ったが、店名だけでなく料理の名も全て将棋に関するものばかりで、初めて行ったような気がしなかった。ここでもお二人は実になごやかに談笑されていた。
(以下略)
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この「飛車角」という店は、水前寺公園の近くにある老舗の串焼き・焼き鳥店で、非常に評判が良い店のようだ。
夫婦がやっている、10人も座れば満員になるようなカウンターだけの店なので、本当に地元の方のお薦めの店なのだろう。
写真を見ると、
・持駒(エビ)150円
・道産子(ししゃも)100円
・三本槍(ゲソ)150円
・水軍(イカ)250円
・関根名人(貝柱)250円
・木村名人(まつぶ貝)250円
・小春(ホタテ貝)350円
・桝目(厚揚げ)250円
・振り駒(にんにく)100円
などが書かれたメニューの一部が写っている。
他にも将棋に関する名が付けられたメニューがあるのだと思うが、この店で一番値段の高い串揚げは小春(ホタテ貝)350円。
小春(阪田三吉の「王将」の中での妻の名前)が、関根十三世名人や木村十四世名人よりも高い値段に設定されているところが面白い。
店主が、将棋好きであることはもちろんのこと、奥様思いであることも想像できる。
谷川浩司竜王(当時)や羽生善治棋王(当時)、蛸島彰子女流五段、解説の小林健二八段(当時)、関係者が訪ねていった時、店主はビックリしたことだろう。
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池袋にある橋本崇載八段の将棋バーへ行く途中に、面白い寿司店がある。
その店の持ち帰りメニューには、(それぞれ握り寿司)
家康 2,680円
信長 1,730円
てんか 1,160円
茶々 1,160円
秀吉 950円
と表示されている。
どのような理由あるいは歴史観でこのような値付けになったのか、非常に興味深いところだ。