棋士麻雀列伝

将棋世界1991年9月号、大野八一雄五段(当時)の「公式棋戦の動き」の全日本プロの項より。

 一方、中田宏の方は、他のバクチは強いが雀歴1年足らずの麻雀の方は人並みに弱い。養殖うなぎといった感じで食べられるだけ。それでもメンツが揃えば必ず打つ。

 やる度にン万円置いて帰る中田宏、棋界での人気ナンバー1だ。

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将棋世界同じ号の「公式棋戦の動き」のNHK杯の項より。

 先ほどの2人(真部八段、中田宏五段)とは違うレベルの麻雀好き。

 こちらの場合は、完全なバクチ、とにかくレートが高くなければ打つ気がしないという体を張った勝負師。

 村山(聖五段)はまだ覚えて日は浅いが「卓の上で死ぬなら本望です」という程夢中になり徹夜も辞さずと打っている。願いは「早く東京に移って高いレートで打ちたい」とのことだから恐ろしい。

 鈴木(輝彦七段)は、千点ン千円以下では気が入らないと緊張した雰囲気をあくまで望むタイプ。

 この激しい勝負を求める2人の将棋は当然のごとく攻め合いとなり鈴木が辛勝した。

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将棋世界1991年10月号、大野八一雄五段(当時)の「公式棋戦の動き」の全日本プロの項より。

 自分の将棋を書くというのは、恥ずかしいものですねえ。

 これが自戦記ならともかく棋戦の動きの欄ではなおさらだよねえ。

 この将棋が行われたのが8月2日。

 3日後に海へ出掛ける予定が入っていた私は大はしゃぎ(天候の為海はおあずけ)。

 森九段の方も遊びのスケジュールがつまっており心はここにあらずといった様子だ。

 肝心の将棋の方は、珍しく私が上手く指し5図の局面となったんだ。

 一見飛車を逃げたくなるが、ひるんだら負けると自分に言い聞かせ、△8四同飛と銀をむしり取り▲8四同歩に△7六銀と強気強気で攻め、押し切ることが出来た(嬉しい)。

 終局後、森九段等と食事をしながら軽く一杯までは良かったが「大野なんかに負けて1500万取り損なった。熱い。麻雀で10万置いてくまで貴様を返さない。さあ、やろう」

 麻雀は二人では出来ない。運の良かったのが側に居た森内と中田宏の両君、酔っている二人をおいしく食べて「さようなら」 ん?

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将棋世界1992年1月号、大野八一雄五段(当時)の「公式棋戦の動き」より。

 阿部の年間の勝ち星は、30勝を上回り40勝に達している。

 下位と指す数が多いといっても40勝は凄い数字だ。それに下のクラスには、お化けがたくさんいる。その辺をおもいっきり叩いてこないと勝ち星は増えない。

  故に、年間40勝を超える者は、タイトル戦に登場したっておかしくないのだ。

 阿部は、今、スキューバダイビングに凝っている。人に会うと直ぐ海の中で座っている写真を見せたがる。他には、麻雀が好きで関東に来ると親しい仲間に「逃げるなよ」と言って誘っている。仲間に言わせれば、「わざわざ関西からカモが来ているのに、時間さえあれば誰が逃げるか」とこうなる。

 冬なんだから海を考えずに頑張れよ!!

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将棋世界1992年4月号、大野八一雄五段(当時)の「公式棋戦の動き」より。

 郷田の攻めは鰹の一本釣りの様に豪快(強引という説もあり)そのもの。

 第2図から▲1三角と打ち込み全部清算した後▲1四銀で決めた。

 可愛い奴の郷田だが、よくもこの前、俺と有森が入っていって誘ったにもかかわらずこっちへ来なかったなぁ!! お陰で麻雀が打てなかったじゃねえか!! それでもってそっちの卓でぼろ負けしたって!! こっちはカモなのによ!

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「大野なんかに負けて1500万取り損なった。熱い。麻雀で10万置いてくまで貴様を返さない。さあ、やろう」

この台詞が、いかにも森けい二九段らしくて最高だ。

結局は森内俊之五段(当時)と中田宏樹五段(当時)に漁夫の利をさらわれてしまうわけだが。

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”カモ”という言葉は、「鴨が葱を背負って来る」の鴨から来ているわけで、鴨鍋の付きものであるネギをカモ自身が背負って食べられにやってくるということわざ。

ところで、鴨鍋にネギは必須なのだろうか?

鍋物のネギが嫌いな人もいることだろう。

調べてみると、ハンティングをされているネギがあまり好きではない方のホームページが見つかった。

鴨葱

野生の鴨を鴨鍋にして食べると、臭味・血生臭さがとても気になるらしい。ところがネギと一緒に食べると臭味がなくなる。試しに鴨肉と椎茸、鴨肉と豆腐、鴨肉と人参、鴨肉と里芋をそれぞれ一緒に食べてみても臭味は減らないという。肉一切れあたりネギ1~2ブツ切りが適量とのことだ。

つまり、鴨鍋にネギを入れて一緒に煮込めば臭味が抜けるという生やさしいレベルではなく、ネギと一緒に鴨肉を食べなければ臭味はなくならないのだ。

より美味しさを増すため入れた方がいいとかそういうわけではなく、臭味を感じないための必需品ということだ。

そういう意味では、野生の鴨肉にとってのネギは、米にとっての水と同様なくてはならない組み合わせ。

昔の人は十分に考えてことわざを作っていたのだなと実感できる。

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最近はやらないが、私の麻雀は接待向きだ。

手作りを楽しみたいほうなので、ポンやチーなどせずにひたすら門前。

相手がリーチをかけようが、当たられる確率は高々13分の1か13分の2と言いながら平気で何でも切ってしまう。

鴨がネギと北京ダックの皮とフォアグラを背負って来るような状態だ。