関西将棋会館の押しの強い広告コピー

将棋世界1993年9月号、神吉宏充五段(当時)の「対局室25時 大阪」より。

地元の宣伝や

 今、関西が熱い。新理事にスーパートリックの森信雄六段を加えて、ますます充実した観のある大阪は、タイトル戦では常に関西将棋会館の4階にある博物館で大盤解説を行い、子供入門教室や将棋まつり等、ファンの喜びそうな催し物が盛り沢山。ほんまに楽しいから、みんな来ーてなって関西の棋士は全員思とります。そら、東京にばっかり負けておれんから、頑張りまっせ。

 ところで、9月より開講の子供将棋入門教室。このパンフレットが凄い。

「あなたも隠れた才能を発掘してみよう。あなたも羽生善治(22歳 年収約1億推定)のようになれるかも」

 だそうである。この年収1億推定というところに味を感じるのだが・・・。さらにこう続く。

「将棋を始めると

 ルールを守り礼節をわきまえる。

 数学(座標)に強くなる。

 物事を落ち着いて考えられる。

 勝負勘・集中力を養える。

 機知に富む。

 積極的な行動力が高まる。

 他人に頼らず最後まで一人でやり抜ける。

 友人が増える。

 団体戦に参加することにより団結力と協調性が生まれる」

 この謳い文句を見ながら関西の個性溢れる棋士達を思い浮かべていただきたい。え、浮かばないって・・・ふっふっふっ。貴方はなかなかの棋界通と言えますぜ。

熱にうなされて汚名挽回

 最近、ワープロで文章を打つ参考にと国語辞典やことわざ・故事、四字熟語の辞典などを買いあさっている。国語辞典ひとつをとっても、20冊以上購入した。どれもよく似たものだと思われがちだが、出版社によって微妙にカラーが違う。それが面白くて思わず衝動買いしてしまうが、そんな辞書を読んでいてふと普段使っている言葉の間違いに気付くことがある。例えば「白黒をつける」と一般的に言われている言葉は、本当は「黒白をつける」が正しく、黒白も”こくびゃく”と読む。これは囲碁から来た言葉で、先手が黒、後手が白だから黒白になるわけである。

 そんな調子でちょっと問題を出すから解いてみますか?

◯怒り心頭に達した

◯怒り心頭に発した

▼押しも押されぬ

▼押しも押されもせぬ

△汚名挽回

△汚名返上

◆苦渋をなめる

◆苦渋を味わう

◇娘十八番茶も出花

◇鬼も十八番茶も出花

▲公算が強い

▲公算が大きい

◎采配をふるう

◎采配をふる

■熱にうなされる

■熱にうかされる

□射程距離に入る

□射程内に入る

★手の内が見える

★手が見える

☆下手な考え休むに似たり

☆下手の考え休むに似たり

▲被害を被る

▲被害にあう

◇燃えたぎる

◇煮えたぎる

◆願わくば

◆願わくは

 これ、正解は後者の方である。どうです。慣用的に前者を使っている人はいませんか。私はもちろんほとんど前者で間違い名人。わかっていても使ってしまうんやなあこれが・・・。

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関西将棋会館子供将棋入門教室のパンフレットの当時の実物を見てみたいものだ。

このケレン味たっぷりの広告コピー、コテコテの濃厚お好み焼きソースを思わせるような、一度読んだら忘れることができなさそうなインパクトだ。

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将棋の効用というと思い出すのが次の話。

将棋ペンクラブ会報2010年春号、前・将棋ペンクラブ会長で作家の高田宏さんと現・将棋ペンクラブ会長で弁護士の木村晋介さんとの対談より。

高田 これから高齢社会でしょう。高齢社会にとって将棋はすごく大事だと思っています。なぜかというと、僕の父親は81歳で死んだのですが、70代の半ばに一時的に呆けてしまったんですよ。目の前に誰もいないのに人がいると思ってとっくに死んだ人を相手に喋っていたり、夜中に徘徊をやったり、これはいよいよだなと思って大いに心配しました。ところが数ヶ月で治ったんです。その時に何が治してくれたかというと囲碁です。親父は囲碁が好きで、呆ける前は近くにある敬老会館で毎週囲碁をやっていました。そこで甘い敬老会館何段というのももらっていました。呆けた後、囲碁仲間のおじいちゃんが「行きましょう高田さん」と親父を誘いに繰り返し来てくれるわけです。そして、ついに根負けして行きました。呆けているから手合いが付いても打てない。でも見ているうちにどこかで繋がったんですね。そして打ち出したらあっという間に正常に戻った。
木村 アルツハイマーでなければありえますね。
高田 そう、気質的なものではありませんでしたから。それで完全に戻って81歳で死ぬまで全く正常で生きたわけです。これは将棋も囲碁も同じ効能があると思います。論理思考がいるわけでしょう。
木村 アルツハイマーの場合でも、部分的にアルツハイマーで残りはそうでない場合は、その部分は戻せるんですよね。アルツハイマーが絶対に戻らないというのは間違った神話です。

(中略)

高田 基本的な性格の違いはあるけれど、高齢化社会で老人が、男も女も最後を生きていく時の、ある歯止めになるのが将棋とか囲碁だと思います。

とても素晴らしい話だ。

そういう意味では、このようなことが医学的あるいは統計学的に有意であることが示されれば、将棋や囲碁の普及の決定打になることは間違いないだろう。