将棋世界1994年1月号、N記者の第24回新人王戦第3局〔森内俊之六段-佐藤康光七段〕観戦記「新人王の樹よ伸びろ」より。
竜王戦挑戦者決定三番勝負に始まった森内俊之六段対佐藤康光七段のライバル対決は、B級2組順位戦、そして新人王戦決勝三番勝負へと連なる”七番勝負”となった。
竜王戦では佐藤の前に悔しい敗戦を喫した森内だが、順位戦での勝利で反撃の足場を築き、三度目の新人王獲得に繋げて、森内ここにありと、その底力を改めて知らしめたのは流石だった。
(中略)
七大タイトル戦への登場を待ち望むファンの声は、ありがたいし励みにもなる。しかし、今は、目の前の将棋を精一杯戦い抜きそして勝つことが、棋士である己に課されたことと思っている。
「抱負と言われても、ちょっと・・・。望んでいることならありますけど、それでもいいですか。順位戦で上がることが、一番強く思っていることです。今より強くなって一つ一つ上がって行ければ、タイトルにもいつかは手が届くのではないかと」
新人王森内は、さらなる大樹へと成長する。大きな実をつけるその姿を、しかとこの目で見届けたい。
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奨励会同期の羽生善治五冠、郷田真隆五段は既にタイトル経験者、佐藤康光七段は2度のタイトル挑戦経験者という状況の中で、いきなりタイトル獲得を目指したり志を立てるのではなく、目の前の対局を精一杯戦い抜き勝つことを自らに課す森内俊之六段(当時)。
20世紀中のタイトル挑戦は1996年の名人戦挑戦と2000年の棋王戦挑戦の2回。
”無冠の帝王”と呼ばれる時代が長かったが、2002年に名人位を獲得。
そして2007年には十八世名人、昨年は竜王名人に。
本当に木が年輪を重ねて大樹になるような力強さだ。
2月に刊行された、森内俊之竜王名人の「覆す力」。
まだ読めていないのだが、今度の3連休にはぜひ読んでみたいと思っている。
覆す力(小学館新書) 価格:(税込) 発売日:2014-02-08 |