藤井猛四段(当時)の右玉・棒金退治

将棋世界1994年3月号、神吉宏充五段(当時)の「対局室25時 in 関西将棋会館」より。

 平藤四段-藤井四段戦はちょっと面白い将棋だった。平藤が変わった振り飛車対策を見せたのだ。それではこれぞ関西!の一局をどうぞ。

 さて、6図で平藤は玉を動かしたが、面白いと言えば・・・。

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6図以下の指し手

▲4八玉△1三角▲1六歩△4三銀▲6八金△5四銀▲2七金△8二玉▲2六金 (7図)

 もうわかりましたか。平藤の採った作戦は「右玉・棒金戦法」。

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 パンチの強い藤井将棋になんたる大胆さ!と思ったが、懸念は現実のモノとなった。

 10手進んで8図。

3  

8図以下の指し手

△2四歩▲1五香△2五歩▲1三香不成△2六歩▲同飛△2五金▲2八飛△1三香 (9図)

 △2四歩が機敏。▲1五香が怖いが、本譜順で△2六歩が△2七金の飛車取りをみて先手なので大丈夫。

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 で9図だが、こうなっては先手玉は悪形極まりなく勝負あり。終わってみれば藤井の快勝だった。

 負けた平藤「もう、指せば指すほど悪くなっていくんやからやってられへん。こっちの駒はボウリングのストライクの時みたいに吹っ飛びよんねん」

(以下略)

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この将棋は相振り飛車の出だしだったので、藤井猛四段(当時)は得意の四間飛車ではなく、三間飛車の構えから石田流本組への展開。

石田流本組にとって棒金戦法は天敵だが、それに右玉が加わるのだから、石田流にとって厄介なことこの上ない構えだ。

それを、藤井四段は、あっという間に粉砕してしまう。

まさしく、豪腕から繰り出される重量級のハンマーパンチ。

石田流ファン、振り飛車党の方にとっては、見ていて非常に心が明るくなる棋譜だ。

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心が明るくなるということでは、やはり昨日の電王戦第3局、豊島将之七段-YSS戦での豊島七段の快勝。

いろいろな意味で、大きな1勝だったと思う。