石田和雄九段「今の若手棋士諸君は、将棋に熱中しすぎていないですかね。わるい事じゃないけど、度がすぎる。他人事ながら心配になるねえ」

将棋世界1995年1月号、河口俊彦六段(当時)の「新・対局日誌」より。

 大野五段を誘って夕食を取りに出かけ戻ってくる途中の鳩森神社のあたりで、石田、前田の二人連れにばったり。

 「なんだい、もう終わったの。もっと粘って記事のネタを作ってくれなきゃ困るよ」なんて言ったら「まあ、ちょっとそこらへ行きましょう」と石田君に誘われた。こういう話は断れない。

 将棋は石田九段が負けた。というより前田七段の傑作だった。負けたときの石田九段の泣きっぷりは有名で、それなりの覚悟をしてついて行ったが、この日は意外に冷静(これは棋士用語)だった。それどころか、「今の若手棋士諸君は、将棋に熱中しすぎていないですかね。わるい事じゃないけど、度がすぎる。他人事ながら心配になるねえ」。数年前だったら考えられないせりふを言った。将棋一筋の名物棋士も、ついに人生を感じるようになったか。

(以下略)

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石田和雄九段といえば、将棋一途でそれまでの棋士の中でも研究熱心なことで定評があった。

その石田九段が「今の若手棋士諸君は、将棋に熱中しすぎていないですかね。わるい事じゃないけど、度がすぎる。他人事ながら心配になるねえ」と言ったのだから、河口俊彦六段(当時)も驚いたことだろう。

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この号が出た頃の勝率トップ10は次の通り。

  1. 丸山忠久五段 36勝5敗(0.879)
  2. 羽生善治名人 29勝7敗(0.806)
  3. 三浦弘行四段 20勝5敗(0.800)
  4. 深浦康市四段 22勝6敗(0.786)
  5. 佐藤秀司四段 20勝6敗(0.769)
  6. 郷田真隆五段 30勝10敗(0.750)
  7. 久保利明四段 17勝6敗(0.739)
  8. 東和男七段 11勝4敗(0.733)
  9. 窪田義行四段 16勝6敗(0.727)
  10. 桐山清澄九段 13勝5敗(0.722)

石田九段がボヤいてしまう気持ちもよくわかる。