近代将棋1990年1月号、池崎和記さんの「福島村日記」より。
某月某日
「ワープロを習うんや」という森信雄五段に同行して梅田の電機店をまわる。2年前、森さんはウォークマンを買い「欠陥品や、音が出ん」と憤慨したことがある。ヘッドホンで聴くということを知らなかった。そんな人がワープロを買えば「何や、衛星放送は映らんのか」などと言い出しかねないから、私がアドバーザーとして同行したのである。機種選定にかなり時間がかかった。森さんはキーボードやフロッピーディスクが何のためにあるかということを知らない(説明しても馬耳東風)。したがって性能比較ができないから、無理もないのだ。大長考の末「画面が見やすいから」という、ただそれだけの理由で富士通製の12インチCRTを選んだ。私は小さな屈辱感を味わった。そのワープロは私が家で使っているものより数倍高性能だったからだ。メカ音痴がアドバイザー以上の製品を所有するのはルール違反だ。ひどいよね。
某月某日
連盟で森さんに会う。「ワープロの使い方、もう覚えた?」と聞いたら「まだまだ。まあ1年はかかるやろな」との返事。健闘を祈る。
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25年前はメカにあまり詳しくなかったといわれた森信雄七段が、今ではブログを複数書かれている。
ブログは思った以上に時間がかかるもので、本当にすごいことだと思う。
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1989年のこの頃は、ワープロ専用機が全盛の頃。日本でパソコンの出荷台数が本格的に増え始めるのは1993年以降のこととなる。
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私がパソコンを初めて購入したのは2001年2月のこと。ソニーのVAIO(デスクトップ)だった。
選ぶポイントは、CPU、メモリーサイズ、価格、デザインだったと思う。
時期的に、OSがWindowsMEという、今ではWindowsの黒歴史と言われるマイナーなOSだったおかげで、ウイルスを作る人達もモチベーションが上がらなかったのか、結果的に10年も無事に使い続けることができた。
何が幸いするのか分からないのが面白いところだ。