「酷評三羽烏」のあけぼの

近代将棋2004年4月号、故・池崎和記さんの「関西つれづれ日記」より。

1月某日

 東京で朝日オープンの久保-森内戦を観戦。解説は朝日オープン選手権者の深浦さん(4月からA級八段)にお願いした。

 昼、深浦さんに誘われ、近くの喫茶店に入った。渡辺明五段、戸邊誠三段、田中誠初段も一緒だ。なかなかユニークなメンバーである。

 渡辺さんと村山四段、戸邊三段の3人は、関東若手の「辛口三羽ガラス」ということになっている(らしい)。この”辛口”というのは「口が悪い」という意味で、田中初段(寅彦九段の長男)によると、渡辺さんが親鳥で、村山四段はひな鳥、戸邊三段は卵、ということになるらしい。

 この三羽ガラスのことは、僕は昨年、島八段から聞いて知っていた。島さんは「酷評研」という、棋士を辛辣に批評する会(島さんが酷評される会?)を主宰しているから、ひょっとすると三羽ガラスはそのメンバーかもしれない(違ってたらゴメン)。

 僕はそのうちの2人と、たまたま会食する幸運に恵まれたわけだが、親鳥と卵の話を聞いていると、ちっとも辛口という感じはしない。渡辺さんとは前にも2回話をしたことがあるが、言っていることは真っ当で、早い話、とても素直である。

 口が悪いといえば、関西の阿部七段や有森七段、神吉六段、畠山鎮六段のほうが何倍も上で、はっきり言って関東の三羽ガラス(村山四段のことはよく知らないけれど)とは手合い違い。三羽ガラスはかわいいものだ。

 というわけで、期待した”酷評”は聞けなかった。僕に遠慮したのかもしれないが、そういう気遣いは無用である。僕も相当に口が悪いほうで、失言は日常茶飯事だから。

(以下略)

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近代将棋2004年8月号、村山慈明四段の「定跡最前線特捜部」より。

 普段からお世話になっており、本誌でも執筆されている泉正樹七段から「村山君もそろそ講座か何か書いてみたら?」と誘いがあった。どんなことを書けばいいのか、自分に務まるのか、不安が多々あったが、せっかくの機会なので引き受けさせていただくことにした。

 題材は編集部で話し合った結果、最新定跡の解説ということになった。僕も定跡講座を書いてみたいと思っていたのでちょうどよかったと思う。

 僕の毒舌日記のようなものを期待していた先生もいたが、さすがに形に残ってしまうものでは本領が発揮されないので、日常の会話を楽しみにされたい(笑)

(以下略)

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なるほど、三羽烏の場合、親鳥、ひな鳥、卵という表現が使える。

四天王だと、東方持国天、南方増長天、西方広目天、北方多聞天みたいな、複雑なことになってしまう。

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「辛口三羽ガラス」は、この後「酷評三羽烏」と呼ばれ方が変化しており、これは「激辛三羽ガラス」との混同を避けるためだったのかもしれない。

渡辺明二冠も、「酷評三羽烏」と自ら名乗っている。

渡辺明ブログ酷評三羽烏関連記事

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国生さゆりさんがものすごい毒舌だったなら、酷評さゆりと呼ばれていたのかなと、ふと思ったりした。

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以前の記事で、「おしゃべり三羽烏」、「激甘三人衆」のことも紹介した。

「おしゃべり三羽烏」の3人のうちの2人が、「激甘三人衆」の3人のうちの2人を兼ねている。

将棋界の”おしゃべり三羽烏”

激甘三人衆