将棋世界1991年5月号、棋士交遊アルバム「松村雄基さん&林葉直子女流名人の巻」より。
松村 女流名人おめでとう。将棋新聞で毎回見てましたよ。
林葉 どうもありがとうございます。松村さんは将棋をいつ頃からやっているんですか。
松村 おぼえて1年くらいかな。この仕事は待ち時間がすごく多くて、2、3時間はあたりまえ。時には10時間も待つことがある。そんな時に将棋やるんだ。
林葉 役者さん同士で指すんですか。
松村 主にスタッフとだね。将棋を教えてくれた山口和彦監督とは会えば必ず指す。
林葉 好きな戦法は?
松村 棒銀とか矢倉。矢倉は▲2六角と組むまで時間がかかるね。
林葉 わあっ、私よりくわしい。私、矢倉なんて全然やらない(笑)。
松村 ねェ、どのぐらい先まで読むの。
林葉 よく聞かれるんだけど、私は7手先ぐらい。
松村 オレなんか、3手詰めの詰将棋にヒーヒーいっているんだ。
林葉 詰将棋はコツがあるんです。駒を捨てていけばたいがい詰みます。
松村 女流名人位戦で清水さんとやった時に、最初に変な手を指したでしょ。
林葉 フフフ。▲3六歩のことね。松村さんもやってみたらどうですか。そうだ、中飛車なんか合いそう。
松村 まん中の歩をトントンと突いちゃうやつか。
林葉 あとで教えてあげます。
松村 対局中に時々中座するっていうけど、あれは作戦なの?それでどこへ行くの。すごく気になるんだな。
林葉 気分転換です。私は人とおしゃべりしたり、ジュースを買いに。
松村 清水さんは1手目からでしょ。
林葉 どこかで精神統一しているんじゃないかしら。
松村 将棋の棋士は記憶力がいいだろうな。
林葉 私は全然ダメ。自分の将棋でもすぐ忘れちゃう。ねェ、セリフはどうやっておぼえるんですか。
松村 いろいろ試してみたけど、前日の夜に一人でおぼえる方法は今も採っているんだ。
林葉 私は2回ドラマに出たことがあるんです。ひとつは安部譲二さんの「塀の中の懲りない面々」で、刑務所に慰問に行く林葉直子の本人役。もうひとつが何年か前の年末ドラマの「田原坂」。西郷さんの銅像に花束をあげる役でほんのちょっと出ました。
松村 里見浩太朗さんが西郷隆盛をやったドラマか。そうだ、オレも出たぞ。
林葉 どんな役でした。
松村 何だったっけ。OKになったらパッと忘れちゃうんだよな(笑)。
林葉 私の将棋といっしょね(笑)。松村さんは芸能界に入ってどのぐらいですか。
松村 17歳でデビューしたから、かれこれ11年か。
林葉 私も同じ頃です。12歳で奨励会に入りました。
松村 アイドルの時代は歌手もやっていて、コンサートで3000人集めたこともある。でもあまり売れなかったし、失敗談も多いよ。テレビの生番組で歌詞をまちがえた時は、上手にごまかすことをしないで「アレッ、まちがえちゃった」と口走ってしまい、あとで散々怒られた。
林葉 そういう時はどうすればいいんですか。
松村 ラララ・・・とごまかすといい(笑)。あるコンサートでは、同じようなメロディの他の曲を歌ったこともある。そしたらバンドの連中は”おかしい、おかしい”と口ずさむんだ。どうも歌手は向いていないな。ところで、カラオケなんか行くことある?
林葉 たまに行きます。プリンセス・プリンセスとか松田聖子の曲が好き。でも最近は演歌もよく歌うなあ。
松村 オレもヒマな時は吉祥寺あたりのカラオケスナックで歌う。こんど、一緒に行こうよ。
林葉 楽しみにしています。将棋以外にはどんな趣味がありますか。
松村 ボウリング、ビリヤード、モトクロス、乗馬・・・。いろいろやったなあ。での熱しやすくてさめやすい。これはB型の特徴かな。
林葉 あっ、私と同じだ。
松村 ただし、ひとつのことに時間をものすごくかける。今は将棋が一番好きだ。昨日なんか明け方まで、一人で盤の上で駒を本どおりに動かしてみた。
林葉 えらい!私も見習わなきゃ。そんなに将棋が好きなら、一局指しましょう。
松村 お願いします。
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こうして林葉さんのレッスンが始まった。駒の並べ方の作法から手つき、そして中飛車の指南と、熱心な指導に松村さんは大感激。帰りかけにン万円をはたいて盤を買った。駒は林葉さんが後日プレゼントするという。松村さんは「こんどはカラオケ合戦でも」と再開を約して、将棋会館をあとにした。
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松村雄基さんといえば思い出すのは大映ドラマ、その中でも「スクール☆ウォーズ」は松村さんの代表作の一つだ。
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「スクール☆ウォーズ」は土曜日の放送で、当時の私は土曜日は毎週のように飲みに出ていたりしたので、あまり観ていなかったと思う。
松村雄基さんが出ていたドラマでよく観ていたのは火曜日の放送だった「不良少女とよばれて」。
非常に独特な雰囲気を持った大映ドラマについては、以前、ブログで書いている。
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『田原坂』は、1987年12月30日、12月31日に日本テレビで放映された日本テレビ年末時代劇スペシャル。
松村雄基さんは、熊本協同隊の宮崎八郎役で出演している。
宮崎八郎は、熊本県出身の自由民権運動家で中江兆民の仏学塾に学び、「九州のルソー」と呼ばれたという。西南戦争で西郷隆盛(里見浩太朗)を支援し、26歳にして志半ばで戦死した。
林葉直子さんは、西郷桜子役で出演。
西郷桜子は西郷隆盛の弟である西郷従道(西郷輝彦)の娘。
後に、岩倉具視の孫、具張に嫁いでいる。