将棋世界1997年3月号、伊藤果七段の「詰将棋サロン解説」より。
昨年の暮れには、クリスマスも兼ねた忘年会を自宅で開きました。有り難いことに30名を超す賑やかさで、芸能関係では荒木一郎さん・立川志の輔さん・神田紅さん・及川恒平さん。作家では遠藤瓔子さん。棋士仲間では島八段夫妻・森下八段・佐藤(康)八段・森内八段・郷田六段・中田(宏)六段・久保五段・北浜五段などでした。顔ぶれの約半数が女性で、しかもほぼ全員が未婚とあって独身男性陣にとってはとても楽しい一夜だったかもしれません。
少し遊びをしたくて、この雰囲気に合うフィーリングカップルゲームも考えたのですが、島八段の提案でやはり全員が参加できる、佐藤八段考案による数字当てゲームに切り替えています。忘年会のスタートは夕方からでしたが、10時近くからは室内の照明を落とし、クリスマスソングを聴きながらそれぞれが持参した品物交換会へ…とここまでがロマンティックだったのですが。
一人減り、二人減り、深夜を回り、明け方になり、早朝を迎え、正午の時報が鳴り出す頃が、本当の終会でした。郷田・久保・北浜、居残り3人組と徹夜でぼくも付き合ったのですから、自分でも感心します。やはりみんな将棋指しなんですね、眠い目を一様に擦りながら、各自が出題した新作詰将棋をあれこれ解いたりしていたんですから…。
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フィーリングカップルゲームと数字当てゲームでは、あまりにも方向性が違うというか、週末の楽しい放課後から雨の降る月曜日の1時間目の授業に戻るような雰囲気がするわけだが、たしかにフィーリングカップルゲームは既婚者が参加するわけにもいかず、全員参加型とするとそのほうが好手だったのかもしれない。
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徹夜の詰将棋。これが真部一男八段(当時)邸だったら徹夜の博打大会、植山悦行六段(当時)邸なら徹夜麻雀になっていただろうが、伊藤果七段邸ならば詰将棋になるのは自然な流れと言えるだろう。
それにしても、華やかなパーティーが終わったあと詰将棋を解き続けるというのが、棋士の本能的な部分であったとしても、本当に凄いことだと思う。