将棋世界1984年3月号、大野八一雄四段(当時)のアマ・プロオープン自戦記「菱田アマ名人との矢倉戦」より。
12月27日朝、将棋会館にむかう途中、中原先生にお会いした。
「今日は何?」と聞かれ、
「アマプロ戦です」と答えると、
「誰なの?」の追いうち。
「菱田さんです」と言うと、
「残念!あの将棋勝っていれば…」とおっしゃるのである。
一緒に歩きながら「なんだろう?」と考えていると、
「NHKのお好み対局で、菱田さんと角落ちを指してやられた」の言葉。
問題はこの先の発言である。
先生曰く「あの時勝って、もし今日君が負ければ、僕との手合いは角落ちになったのになあ」と、悔しいご様子。(でも、笑顔なのですぐ冗談とわかる)
鳩森神社を横切ろうとした時、突然、
「絶対にお参りして行った方が良い」と言い出される。私もこのような流れは好きな方なので、すぐに同意しお参りすることとなる。
賽銭を投げる時に、お金のない私は、「先生、僕の分もお願いします」と頼んだのだが、
「こういうことは、自分のお金でないとダメだよ」と、後輩の頼みを聞いてくれない。
仕方ないので、しぶしぶ10円玉を投げようとすると、
「今時10円玉では、神様だって何も叶えてくれないよ」と厳しい催促。
泣く泣く100円玉も入れ対局室へと向かった。
(以下略)
——–
大野八一雄四段(当時)はこの日のアマプロ戦で勝利している。
——–
それにしても、中原誠十六世名人が鳩森神社で代わりになって拝んでくれるのなら、もっと効果がありそうな感じもする。
大野四段が「先生、僕の分もお願いします」と言った気持ちもわかるような感じがする。
——–
アマチュアの場合、神社でお参りするまでもなく、棋士と同じ場所にいただけで、棋力が瞬間的に上がっている場合がある。
私の経験上、半日から1日は持続すると思う。
棋士が審判長を務める将棋大会などではみんなが同じ条件なので差は出ないが、何かの機会があったら、私の理論が正しいかどうか、ぜひ試してみていただきたい。