郷田真隆棋聖(当時)「これまで、少し遠回りしてしまったかなと思うこともあったけれど、丁度いい区切り、気持ちも新たに頑張っていきたいと思う」

将棋世界1999年5月号、郷田真隆棋聖(当時)の「昇級者喜びの声(B級1組→A級)より。

 今年度、4月からの前半戦は自分でも驚くくらいの成績が残せた。

 必ずしも内容の伴うものではなかったが、決断よく指していた事が勢いを生んだのだと思う。

 7月にタイトルを取り、順位戦は5連勝。しかし王座戦の挑決で一手詰を喫したりして、何かしっくりしないものを感じていた。

 6戦目の田中九段戦でその心配が結果となって現れてしまった。

 内容的にも全くいい所のない完敗で、感想戦も殆どする所がなかった。

 そして続く田丸八段戦で連敗。苦しい中盤を踏ん張って、少し有利で迎えた終盤戦での競り負け。

 自分の甘さを思い知らされ、不甲斐ない自分の将棋を恥ずかしいと思った。

 ともあれ、5連勝でいけそうだと思っていた矢先の連敗で、この敗戦は応えた。

 12月になって、桐山九段戦に比較的良い内容で勝つことが出来て、これでまた昇級を目指す気持ちになれた。その意味では、この勝利が大きかったと思う。

 残り3戦、小林八段戦、中村八段戦と苦しい将棋だったが勝つことが出来、昇級の一局を前にして久しぶりに夢を見た。

 勝って昇段する夢を見たのは三段リーグの時以来だから、9年ぶりのことだ。

 高橋九段との一局は、意外に平常心で指すことが出来た。図は、その一局の終了図で、振り返ってみると、自分でもなかなか上手く指せたと思う。

郷田高橋2

 自宅に帰って、今までのことを振り返りつつ自分の成績を調べてみると、残る公式戦一局と合わせて丁度500勝でA級に臨むことになる。

 これまで、少し遠回りしてしまったかなと思うこともあったけれど、丁度いい区切り、気持ちも新たに頑張っていきたいと思う。

 両親と姉、師匠、応援して下さった皆様に感謝します。

 有難うございました。

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「これまで、少し遠回りしてしまったかなと思うこともあったけれど」と書かれているように、郷田真隆王将は、羽生世代の棋士の中では初タイトル獲得時期は非常に早かったものの、A級昇級は羽生世代の棋士の中では遅い方。

ようやく落ち着くべき所に落ち着いた、ということになる。

ちなみに、羽生世代の棋士の四段昇段、初タイトル獲得、A級昇級の時期は次の通り。

郷田真隆王将
四段昇段が19歳
初タイトル獲得が21歳
A級昇級が28歳

羽生善治三冠
四段昇段が15歳
初タイトル獲得が19歳
A級昇級が22歳

森内俊之九段
四段昇段が16歳
初タイトル獲得が31歳
A級昇級が24歳

佐藤康光九段
四段昇段が17歳
初タイトル獲得が24歳
A級昇級が26歳

丸山忠久九段
四段昇段が19歳
初タイトル獲得が29歳
A級昇級が27歳

藤井猛九段
四段昇段が20歳
初タイトル獲得が28歳
A級昇級が29歳

村山聖九段
四段昇段が17歳
A級昇級が25歳

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私は中学3年の時に第一志望校に合格する夢を見たが、逆夢だった。

勝って昇段する夢が二度とも正夢になっているのだから凄い。

なかなか正夢を見ることは難しい。