清水市代女流王将(当時)「酉年へ、ようこそ」

近代将棋1993年1月号、「酉年棋士、大集合!」より、清水市代女流王将(当時)の「酉年へ、ようこそ」より。

 皆様、酉年へようこそ!

『鳥雀枝の深きにあつまる』
 心の豊かなる人間味のある人のところへは、自然に人が慕い集まってくる。
(こういう人にわたしはなりたい……)

『愛屋烏に及ぶ』
 自分が愛している人のためには、その人の家の屋根にとまっている烏さえも大事にし、かわいがるようになるものだ。
(ん~、まさに一途)

『鳥もちで馬を刺す』
 とてもだめなこと。馬を刺すのに鳥もちを使うのはよい方法とは言えぬ。無理なことはやっても意味がない。
(そりゃ、確かに無理やねぇ)

『鳥は木を択べども木は鳥を択べず』
 鳥は、どの木にとまろうが好きな木をえらべるが、木のほうはただとめるだけで、自分からはえらべない。人と土地の関係も、やはり同じだということ。
(”鳥”で生きるか”木”と生きるか。究極の選択っ)

『鳥籠に鶴をいれたよう』
 どうにも狭くて動けないことで、せせこましいことのたとえ。
(通勤ラッシュが思い浮かぶわ。どうしてこう、都会は皆忙しそうなのだろう)

『鳥目に八つ目鰻』
 鳥目はビタミンAの不足から起こるので、鳥目の治療には、ビタミンAの多い八つ目鰻を食べると効き目があるという。
(へ~。ビタミン不足にはご用心!)

『烏鷺の争い』
 碁の勝負をすること。烏鷺は、カラスとサギのことで、黒石と白石の碁の異名。
(初めは烏が飛び回ってるんだけど、いつの間にか、鷺の舞いになってしまうのよねぇ……)

『鳥囚われても飛ぶことを忘れず』
 だれでも自由を求めぬものはないということ。籠の中の鳥は、いつも広い自由の天地を羽ばたこうと願っているし、つながれている馬は、常に自由に駆けたいと思っていう。
(でも自由を得れば何かを失うのかな)

『鳥なき里の蝙蝠』
 鳥のいない所では、コウモリもいっぱし鳥を気取って威張っているということで、優れた人のいない所では、つまらぬ者が威張っていることのたとえ。
(そこまで言う!?)

『鳥が触れたか風が言うたか』
 人に知られないようにしていたのが、どこからそれがもれたのか、わからないときに言う言葉。
(あるある。”恋すてふ~”って心境かしらね)

『鳥は立てども後を濁さず』
 立ち去る者は、あとが見苦しくないようによく始末すべきだ。昔の人は宿を借りたら、壷を洗って水まで入れて出発したという。
(鮮やかに退いて、敵ながらあっぱれ。とでも言わせてみたいやね)

『とりつく島もない』
(あんれ?このとりはちょっと違うみたいだわっ)

 それにしても、まあ選ドリ見ドリとはまさにこのこと。まだまだ沢山あり過ぎて、思わず見とれてしまう程。
 
 では皆様、どうぞ、より良い一年でありますよーに……。

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初めて知ることわざも多く、味わい深い。

調べてみると、鳥に関する故事・ことわざには次のようなものもある。

  • 足下から鳥が立つ(身近なところで意外なことが突然起きること。急に思い立って慌しく行動を起こすこと)
  • あの声で蜥蜴食らうか時鳥(トカゲを好物なホトトギス。人やものは見かけによらないもので、外見と中身が異なり驚かされること)
  • 鴛鴦の契り(鴛鴦はおしどり。夫婦の仲が良いこと)
  • 鶏群の一鶴(多くの普通の人の中に、一人だけ抜きん出て優れた人が混じっていること)
  • 門前雀羅を張る(門の外に網を張って雀を捕まえられるほど、訪ねてくる客もなく寂れている様子)
  • 焼け野の雉子、夜の鶴(キジは巣のある野を焼かれたら、自分の危険もかえりみず子を救おうとし、鶴は寒い夜に翼で子を覆って暖める。子を思う親の情愛が深いこと)

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酉年生まれの棋士は引退した棋士も含め33人。棋士輩出率が相対的に高い干支だ。

(1933年生まれ)
吉田利勝七段
長谷部久雄九段
関屋喜代作八段
(1945年生まれ)
野本虎次八段
(1957年生まれ)
小林健二九段
植山悦行七段
田中寅彦九段
大島映二七段
加瀬純一七段
依田有司七段
神田真由美女流二段
(1969年生まれ)
勝又清和六段
飯塚祐紀七段
畠山成幸七段
畠山鎮七段
佐藤康光九段
清水市代女流六段
植村真理女流三段
中井広恵女流六段
(1981年生まれ)
山崎隆之八段
村中秀史六段
村田智弘六段
宮田敦史六段
片上大輔六段
岩根忍女流三段
(1993年生まれ)
斎藤慎太郎六段
高見泰地五段
三枚堂達也四段
髙野智史四段
室谷由紀女流二段
香川愛生女流三段
渡部愛女流初段
伊藤沙恵女流二段

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故・村山聖九段も1969年の酉年生まれ。

今年3月から公開される映画『3月のライオン』の主人公の神木隆之介さん、共演の有村架純さん、NHK将棋フォーカスの司会の伊藤かりんさんも1993年の酉年生まれ。

まさに「酉年へ、ようこそ」。