森内俊之八段(当時)「はっきり言ってライバルである」

将棋世界2001年2月号の、アサヒスーパードライの広告「キレ味。この一手。 第5回 森内俊之八段」より。

鋭く決める

 前年度の竜王戦で中川大輔六段と対戦した。中川さんとは奨励会の級位者だった頃からずっとしのぎを削ってきた間柄で、四段になった棋士番号もわずかに1番違い。はっきり言ってライバルである。

 中川さんは横歩取りのスペシャリスト。私も横歩を取れる時は取るのが好きなので本局も横歩取りになった。飛車角が空中を乱舞する激しい応酬から私が優勢になり、図は先手が角で4四の飛車を取って、後手が△同歩と取り返した局面。

 どう決めるかというところだが、普通に▲5三桂成△同金▲3二飛の王手角取りは△4二桂合いが両方をいっぺんに受けるぴったりの手だ。これでも先手優勢だが、私は▲5三桂成以上の決め手を発見した。図から▲5三飛成!△同金▲3二飛△4三玉▲3四飛成△同玉▲5三桂成。飛車から行くのがキレ味鋭い一着で、これなら合駒する桂がない。以下は必然の進行で包囲網を築き寄せ切ることができた。

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普通に考えれば、▲5三桂成△同金▲3二飛△4二桂▲2二飛成で満足してしてしまうところ。

▲5三飛成と行ったとしても、△同金▲3二飛△4三玉▲2二飛成、または△同金▲同飛成△同玉▲3二飛△4二桂▲2二飛成で十分と思ってしまうところ。

しかし、これでは中盤の指し方の感覚なのだろう。敵陣をボロボロにしたものの寄せの形は見えてこない。

後手玉が寄り形になる時は寄り形にする。

これで十分と思わずに、更に良い手を探すのがプロの本能なのだろう。

とはいえ、私などの場合は欲をかいて失敗することが多く、このバランスと言うか見極めが難しい。

分相応の欲にしておけ、ということなのだと思う。

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「はっきり言ってライバルである」という表現が面白い。

将棋世界2002年8月号に掲載された、森内俊之九段と中川大輔八段が一緒に写っている写真がある。撮影は炬口勝弘さん。

右から、10代の頃の森内九段、中川八段、先崎学九段。

今はなくなったが、渋谷将棋センターでの研究会(ハチ公研と呼ばれていた)の帰りのシーン。