将棋世界2003年7月号、アサヒスーパードライ広告「勝利への躍動 羽生善治竜王名人<五段篇>」より。
大山康晴十五世名人とは、公式戦で8局対戦する機会に恵まれた。実際に対局した大山先生は、盤を挟むと無言の威圧感があり、私は常に緊張した状態で対局していたことを覚えている。それとは対照的に大山先生は若手相手に指導将棋を指しているような余裕があり、当時の私はまだまだ勝てる気がしなかった。本局は私にとって2戦目となる対大山戦。
図は大山先生が7二から飛車を回って成り込みを見せたところ。端歩を取り込まれる大きな手もあるし、2六の銀が遊び気味で形勢に差をつけられそうな局面だ。
ここで平凡に▲4七歩と受けるのは△4六歩と合わせられ、浮き駒の銀を狙われて困る。図の局面で私は▲4四歩と打った。△同角は▲4三歩が厳しい。△4四同飛の一手だが、そこで▲4七歩と受ければ△4六歩に▲3五銀と飛車取りの先手で遊んでいる銀を活用することができる。
決定的な差をつけられずに何とか終盤にたどり着き、最後は執念で大山先生に競り勝つことができた。この勝利で大きな自信を得た私は、その後NHK杯初優勝という栄冠を勝ち得ることができた。
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昭和63年11月16日、NHK杯戦3回戦、羽生善治五段(当時)-大山康晴十五世名人戦。
この後、羽生五段は準々決勝で加藤一二三九段を、準決勝で谷川浩司名人(当時)を、決勝で中原誠棋聖を破り、NHK杯戦初優勝を遂げる。
大山十五世名人から数えて、名人経験者4人に連続して勝っての優勝だからインパクトが更に大きい。
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この期のNHK杯戦、準々決勝の対加藤一二三九段戦の終盤で現れた羽生五段の絶妙手▲5二銀が非常に有名だが、羽生三冠から見れば、その手を上回る思い出の対大山十五世名人戦の▲4四歩。
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NHK杯戦2回戦、森内俊之九段-藤井聡太四段戦が生放送で放映されることが発表された。解説は佐藤康光NHK杯。(放送は9月3日10:00~12:00。それに伴い将棋フォーカスは16:30~17:00に変更)
→藤井四段と森内九段の対局生放送 9月3日NHK杯(毎日新聞)
通常のNHK杯戦は、生放送と同じ形態で収録されている(放送時間をオーバーした時のみ編集)ので、少なくとも対局者にとってみれば何も変わらない。もちろん制作スタッフの緊張感は通常時に比べ大きくなるが。
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当日は対局終了まで放送されるという。当日のNHK杯囲碁トーナメントの放送予定時刻は変わっていないので、12:00以降はEテレのサブチャンネルで放送されるのかもしれない。
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プロ棋戦での平均手数は110手前後と言われているが、NHK杯戦の場合は130手前後で感想戦が入るかどうかギリギリ。140手を越すと通常の放送時間には収まらなくなる可能性が高くなり、その場合は一部編集される。
今回の生放送は時間が十分にとられているので、150手前後の手数になっても感想戦を見ることができる。
制作側で最も心配するのは千日手や持将棋だが、それも今回は心置きなく全てを放送できる。
逆に対局が早く終わってしまった場合、結構時間が余ってしまうが、昔の『将棋パトロール』のような番組は用意されていないということなので、詳細な感想戦が行われることになりそうだ。