関西将棋会館建設の時のこと(1980年)

将棋世界1980年12月号、『関西将棋会館』建設趣意書より。

 全国の皆さま、日本将棋連盟はいよいよ「関西将棋会館」を大阪に建設することになり、5月15日に起工式を行いました。

 ご承知の通り、将棋は日本固有の文化であり、将棋連盟は伝統を継承する全国ただ一つのプロの団体であります。特に近年「将棋は思考力を養う、節度ある知能ゲーム」として評価も高く、中学、高校の必修クラブ活動の選択課目となりました。礼儀、作法に準拠する棋道の本義を青少年教育に……、当連盟も社会教育的に重責をになっております。

「関西将棋会館」は本来、オール西日本の本山であります。にもかかわらず現在の関西本部は環境、規模ともあまりに貧しく、社会的要請に応じるなど思いも及びません。移転と再建は棋界の幾十年来の宿願でありました。このため連盟はまず大阪市内に格好の土地を選び、幸い土地代金を完済し得たのでようやく建設に踏み切った次第であります。

着工 昭和55年5月
完成予定 昭和56年4月
建設地 大阪市福島区福島六丁目三番十四号所在 400平方メートル(120坪)
構造 鉄筋コンクリート造り、地上5階。
延床面積 1800平方メートル(544坪)

 右の構想に基づく建設費凡そ5億円。自己資金9,000万円を基金に、三名人の”特別記念免状”を発行して資金の一部に充当します。しかし何分にも大事業であります。はなはだ心苦しいことですが、資金の不足分は全国の愛棋家各位、産業界のご理解に訴えてご賛助を仰ぐほかはありません。ご協力に対する謝恩の方法は別途に立案しております。

「関西将棋会館」は連盟関西本部で管理しますが決してプロの専用ではございません。あくまで西日本一千万ファンの拠りどころであります。市街に調和する近代将棋ビルであると共に、西の本山にふさわしく重厚にして気品のある建物を想定しております。各階に対局、教室向けに和、洋両式の部屋を設け、青少年研修室、図書室、資料展示室といたします。

 ことに「資料展示室」には大きな希望を持っています。由来、関西は将棋文化の先進圏として古い時代の書画、珍品、名器など諸々の得難い資料が愛好家の許に秘蔵されていると聞きます。これらの貴重な諸資料を発掘し、あるいはご出品をお願いいたしたいと存じます。また源流を同じうする世界各国の将棋を集めるなど、わが国では初めてのミニ”将棋博物館”をつくる考えであります。

 完成後の会館は勿論ひろくファンに開放します。礼節を重んずる人間形成の道場としてさらにはチェス、中国象棋を通じて国際親善にも活用したいと念願しております。

 以上が「関西将棋会館建設」の趣旨であります。

 400年の伝統を継ぐ将棋道は東京と大阪、東西二つの同格の本山によって初めて真の開眼が成りましょう。

 時節柄恐縮でございますが、なにとぞ右の趣旨にご賛同くださいまして、本建設事業に格別のご援助を賜りますよう偏えにお願い申し上げます。

昭和55年11月

社団法人 日本将棋連盟
関西将棋会館建設委員会
代表委員 木村義雄 大山康晴 中原誠

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三名人の特別記念免状。特別記念免状で1億円の収入が見込まれていた。

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それまでの関西本部は大阪市阿倍野区北畠にあった。2階建ての旅館を買い受けて改装したもので、「冷暖房皆無、貧弱、室狭、交通稍便」という状況だった。

東京の将棋会館は1976年に建て替えられたが、大阪は場所を移転して建設するという方式。

熱意に溢れた建設趣意書。

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関西将棋会館建設の際には、多くの法人、支部、棋士の後援会、個人などから寄付が行われ、寄付者名は寄付金額とともに将棋世界に掲載された。

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将棋世界1981年1月号~1982年3月号の「関西会館建設募金寄付者御芳名」より。

寄付金が200万円以上の法人は次の通り。これらの企業をはじめとして、大山康晴十五世名人・会長が数え切れないほどの企業を訪問していたわけで、本当に凄いことだと思う。

東京銀行協会(16行) 1500万円
日本自動車工業会 1500万円
電気事業連合会 1500万円
松下電器産業 600万円
関西電力 500万円
読売新聞大阪本社 500万円
井上碁将棋盤店 500万円
日本建築業団体連合会 450万円
サンケイ新聞社 300万円
日本経済新聞社大阪本社 300万円
松下電工 300万円
東京芝浦電気 300万円
日立製作所 300万円
中日新聞社 250万円
大阪瓦斯 200万円
川崎製鉄 200万円
神戸製鋼所 200万円
住友金属工業 200万円
阪急電鉄 200万円
近畿日本鉄道 200万円
三菱電機 200万円
三洋電機 200万円
松下冷機 200万円
近鉄百貨店 200万円
オーヤマ・データサービス 200万円

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東京銀行協会(16行)の1500万円はこの当時の都市銀行13行と長銀3行。銀行系では他に信託協会150万円、全国相互銀行協会40万円。

生保・損保系では生命保険協会100万円、損害保険協会 100万円、大同生命100万円、同和火災海上保険30万円。

証券会社はないが、金融機関系は協会がまとめている。

総合商社は、三菱商事 60万円、三井物産 57万円、伊藤忠商事 44万円、丸紅 43万円、住友商事 28万円、日商岩井 28万円と、売上高に応じた金額。

関西が本社の川崎製鉄、神戸製鋼所、住友金属工業は揃って200万円。

関東が本社の東京芝浦電気 、日立製作所はともに300万円。東京の会館で大きな寄付のあった三菱電機は200万円。

やはり関西が本社の松下グループは、松下電器産業600万円、松下電工300万円、三洋電機 200万円、松下冷機200万円、松下電子部品100万円、松下精工100万円と手厚い。

関西の私鉄は、阪急電鉄200万円、近畿日本鉄道200万円、阪神電気鉄道150万円、南海電気鉄道100万円、京阪電気鉄道 50万円。

上記以外の関西系企業では、サントリー150万円、シャープ100万円、積水ハウス100万円、近畿電気工事 100万円、コクヨ 100万円、ダイエー100万円、阪神不動産50万円、任天堂 30万円など。

上記以外の関西系ではない企業では、三越100万円、三井造船100万円、味の素80万円、ブリヂストンタイヤ50万円、明治屋50万円、千葉そごう50万円、長野東急百貨店30万円など。

東西の協会系では東京医薬品工業会100万円、大阪医薬品工業会100万円。

大山十五世名人系では、関西大山会 128万円、クラレ 100万円、倉敷紡績100万円。

上記以外の新聞社では、朝日新聞社100万円、静岡新聞社100万円、スポーツニッポン新聞社100万円、赤旗編集局100万円、日刊現代100万円、日刊スポーツ新聞社50万円、中国新聞社50万円、㈱共同通信社30万円、河北新報社30万円など。

出版社では、近代将棋社81万円、文藝春秋80万円、将棋天国社50万円、大修館書店50万円。近代将棋の金額が粋だ。

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個人では、塚田正夫名誉十段のご遺族から100万円、大野源一九段の御遺族から40万円。

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そして、この時代の個人では、やはりこの二人。

七條兼三氏100万円、高木達夫氏100万円。

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七條兼三氏→将棋界の大旦那「七條兼三」(1)

高木達夫氏→広島の親分

 

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