村山慈明四段(当時)「木村一基七段をイメージして指しました」

将棋世界2005年10月号、関浩六段の「公式棋戦の動き 棋聖戦」より。

 一次予選が大詰めを迎え、佐藤(紳)、豊川、村山らが二次進出を決めた。

 村山-広瀬戦は、1図から穴熊らしい展開になる。

(中略)

 村山はその後も駒得を重ねて優位を広げたが、広瀬は金銀を投入して粘る。

 2図で、▲5二と△同金▲5三歩成なら△6八歩で勝負になる。村山は、危ない橋は渡らなかった。実戦は▲2九金△2五竜▲同馬△同桂▲4七竜△6九角▲同金△同と▲6七竜(3図)まで、村山の勝ち。

「木村先生(一基七段)をイメージして指した」という▲2九金が賢い勝ち方だった。竜を消し、と金を責めることで後手の切れ筋は明らかになった。終盤戦では常に、寄せ合い勝ちと受け切り勝ちの両面を見据える必要がある。

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2図を見ると、先手は竜と馬2枚とと金、それに持ち駒には金があるので、ガリガリと攻めたくなるところ。

そこのところを、村山慈明四段(当時)は敵の攻め駒を責める木村一基九段流の受けで、もっと早く勝負をつけてしまった。

ある意味では友達を失うような手順。

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受け切れば確実に勝てるような局面で攻めに行って、それで負けることもある。

終盤になったら木村一基九段の顔か大山康晴十五世名人の顔を思い浮かべて、受け切りの可能性を考えてみるのも非常に効果があるかもしれない。