将棋マガジン1987年1月号、大崎善生さんの「編集後記」より。
「ゴホン、ゴホン」と咳をしながら中原名人が編集部に。「風邪ひいちゃって、もう5,6日治らないんだ」とのこと。うーむ、名人でも風邪をひくんだなと感心していたら……。次の日、突然くしゃみが止まらなくなって、鼻水が出て、熱っぽくて。嬉しかったですね。
「ワーイ、名人に風邪をうつされたぞー」とはしゃいでいたら、女子職員のMさん「まさか、名人の風邪が大崎君にうつる訳ないじゃない」
私の風邪は翌日に完治。大方の予想通り、名人の風邪とはまるで症状が違いました。とほ。
* * * * *
その人から風邪をうつされて、通常は次の3通りのうちのいずれかの感情が湧き上がってくると思う。
- 嬉しい
- まあ、仕方がない
- かなり迷惑、腹が立つ
どう感じるかによって、深層心理も含めて、その人のことを普段どう思っているかのリトマス試験紙になると思う。
* * * * *
ビートルズの熱烈なファンの人が、ポール・マッカートニーやリンゴ・スターから風邪をうつされたら、きっと熱狂するだろう。
だからといって、歌や楽器の演奏や作曲能力が高まるとは考えないと思う。
しかし、棋士に風邪をうつされたら、将棋が少しは強くなるのではないか、とついつい思ってしまいそうだ。