羽生善治四段(当時)の初めてのNHK杯戦

将棋マガジン1986年6月号、「公式棋戦の動き NHK杯戦」より。

 お隣の早指し戦と同様NHK杯戦も新シリーズが開始されました。

 福崎-羽生戦。第36回の劈頭を飾るにふさわしい魅力的なカードが実現しました。ご覧になった方も多かったでしょう。

 9図は6七の地点で金銀をふりかわり、福崎が飛の成り込みを見せたところ。

 我々なら、△6六歩(金)などと指しそうですが、羽生の指した手は△7六金!「飛車を成るんなら、どうぞ」の指し手です。以下▲6一飛成に△8七金▲同玉△8六飛▲7八玉△8七銀▲6七玉△6六歩▲6八玉△2四角▲4六桂△同歩▲7二竜△7六銀成▲3三歩△4七歩成(10図)まで、羽生の勝ち。見事なもんです。次の相手は米長。期待で胸が高鳴るのです。

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たしかに、9図から△6六歩か△6六金かを悩んで、△6六歩は▲7七飛とされるのが気になるので△6六金と指そうか、と考えてしまいそうになる局面。

それを△7六金なので、はじめの一瞬は意味がわからないが、少し考えると、じわじわと△7六金が良い手であることがわかってくる。

NHK杯戦の短い持ち時間の中での△7六金。

やはり、羽生善治四段(当時)には、羽生四段にしか見えない盤上の光景があるのだなと、どうしても思えてくる。