棋士の初段通過年齢から読み取る全体的傾向

近代将棋1984年12月号、「関東奨励会」より。

 先般、大変興味深いデータを目にした。

  • 名人 13.5歳(4人)
  • タイトル者 16歳(13人)名人を含む
  • A級 17歳(30人)名人を含む
  • C級 20.5歳(28人)現在30歳以上の人
  • 準棋士 22歳(24人)

 と、これは、奨励会での初段通過年齢を各クラス別に分け、その平均を出したものである。一目瞭然。出世率と初段通過年齢には見事な相関があることがわかる。

 平均値を示されて、それより上だから良し、劣っているからダメとノータイムで判断するのはどうかと思うが、奨励会の戦士にとって一応知っておいても良いデータだと思う。特にこれから入品を目指す者たちの指標になり励みになればと思いご紹介した次第である。

 ただ、このデータのサンプルは当然ながら現行規定時(今は20歳までに初段というのが第一関門)のものではないので、スピード化と情報化の進んだ今に生きる者としてはもう少しキビシメに思っていた方が間違いがないであろう。

(以下略)

* * * * *

ここでの名人、タイトル者、A級は、それぞれ経験者ということになるのだろう。

初段通過年齢は二段になった時の年齢。

同じような集計はできないが、現在版を調べてみた。

(二段になった時の年齢は「将棋順位戦データベース」より。棋士名の右の数字は二段になった時の年齢)

〔タイトル保持者・A級〕

広瀬章人竜王 13
佐藤天彦名人 14
豊島将之二冠 13
高見泰地叡王 14
斎藤慎太郎王座 14
渡辺明棋王 13
久保利明王将 15
羽生善治九段 13
稲葉陽八段 16
佐藤康光九段 16
深浦康市九段 16
三浦弘行九段 15
糸谷哲郎八段 15
阿久津主税八段 15

〔B級1組〕

行方尚史八段 17
屋敷伸之九段 15
橋本崇載八段 14
木村一基九段 15
山崎隆之八段 13
谷川浩司九段 13
郷田真隆九段 14
菅井竜也七段 15
松尾歩八段 17
野月浩貴八段 20
畠山鎮七段 18

〔B級2組〕

丸山忠久九段 16
北浜健介八段 16
横山泰明六段 18
村山慈明七段 16
中田宏樹八段 17
中村太地七段 14
澤田真吾六段 15
飯島栄治七段 17
藤井猛九段 18
窪田義行七段 18
井上慶太九段 17
中村修九段 16
畠山成幸八段 17
中川大輔八段 18
佐々木慎六段 18
鈴木大介九段 16
大石直嗣七段 15
田村康介七段 15
阿部隆八段 16
千田翔太六段 15
永瀬拓矢七段 14
戸辺誠七段 15
飯塚祐紀七段 20
先崎学九段 15

全棋士について調べようと思ったが、かなりの作業量となるので、とりあえずはB級2組以上まで。

あまり意味のない数字になるだろうが、現在のタイトル保持者・A級の平均は14.4歳、B級1組は15.5歳、B級2組は16.3歳となる。

C級1組以下で二段になった時の年齢が特に若いのは、

藤井聡太七段 12
佐々木勇気七段 12
阿部光瑠六段 13
増田康宏六段 13

* * * * *

近代将棋のこの記事が書かれた頃よりも、奨励会入会の若年化が進んだということもあるだろうが、明らかに二段になる年齢が全体的に下がってきていることがわかる。

「平均値を示されて、それより上だから良し、劣っているからダメとノータイムで判断するのはどうかと思うが」と書かれている通り、個々のケースでは一概には判断できないものの、全体の流れとしては緩やかに傾向がつかめる数字になるのだと思う。