森内俊之四段(当時)の初々しい自戦記

将棋世界1987年12月号、森内俊之四段(当時)の第18回新人王戦三番勝負第1局〔対 飯田弘之四段〕自戦記「幸運な一局!」より。

将棋世界同じ号のグラビアより。撮影は中野英伴さん。

 小降りの雨の中を歩き、9時50分頃連盟に到着。4階に上がり、掲示板を見てびっくりしてしまいました。なんと僕の将棋が特別対局室なのです。おまけに控え室まで用意されています。普通の将棋と同じような気持ちで行った僕は少し緊張しました。こんな事なら去年の新人王戦の事を書いた本を、読んでおくんだったと思いましたが、すでに遅くそのまま対局室へ。少しして飯田四段が来られ10時3分に対局が始まりました。

 どうも頭がボーッとして考えられません。新人王戦の1回戦の時も、始まってしばらくこんな状態でした。緊張しているな、という思いが頭をよぎりました。

(中略)

 今期の新人王戦に、僕は予選からの参加で、なんとかここまで来ることができましたが、予選を勝って本戦に出られた時は本当に嬉しかったのを覚えています。その時は、5時間という長い持ち時間を使えるかということもあり、不安と期待で胸がいっぱいでした。奨励会の時に新人王戦をやっていたおかげで、四段になってからも長い持ち時間に戸惑わずに指すことができましたし、とても勉強になりました。これからは、もっと奨励会からの参加が増えればいいと思います。

(中略)

 この将棋は序盤はまずまずでしたが、途中から玉の堅さの違いが生きる将棋になってしまい非常に勝ちにくい将棋でした。最後の最後で飯田四段が誤られ、結果は幸いしましたがもっと内容のいい将棋を指さなくてはいけないと思いました。

 本誌がでるころには、新人王戦も終わっているはずですが2局目も頑張りたいと思います。

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森内俊之四段(当時)はこの年の5月13日に四段に昇段したばかり。

本戦1回戦で松浦隆一五段、2回戦で前回の優勝者・塚田泰明七段、3回戦で森下卓五段、準々決勝で中田宏樹四段、準決勝で島朗六段を破っており、凄い相手に勝っての決勝進出だった。

奨励会からは4人、女流棋士は2人(中井広恵女流名人、林葉直子女流王将)の出場という時代。

森内四段は第2局にも勝ち、四段1年目で新人王に輝くことになる。

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この期の新人王戦の2回戦と3回戦の間に、森内三段は四段に昇段している。

「奨励会の時に新人王戦をやっていたおかげで、四段になってからも長い持ち時間に戸惑わずに指すことができましたし、とても勉強になりました」は、

三段時代に新人王戦の1回戦と2回戦で持ち時間5時間を経験していたので、すぐその後に四段になって、四段以上が出場する棋戦に出場しても、新人王戦1回戦・2回戦の経験があったので戸惑わずに指すことができた、という意味。

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「なんと僕の将棋が特別対局室なのです」「5時間という長い持ち時間を使えるかということもあり、不安と期待で胸がいっぱいでした」など、感動的な初々しさだ。

 

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