「我々の序盤はもう古いんだね。お互い新しい戦法を勉強せんといかん」「我々???この指し方は今月の私の講座に書いてありますよ」

将棋世界1987年2月号、小野修一五段(当時)の「将棋相談室」より。

 先日私との対局で飛先不突を用いられた米長十段、感想戦で中原名人をつかまえ「我々の序盤はもう古いんだね。お互い新しい戦法を勉強せんといかん」。それを聞いた中原名人「我々???この指し方は今月の私の講座に書いてありますよ」。

 名人が去った後、米長十段

「ウーン、どうもオレは彼氏の講座をバカにして(注:プロは他人の講座はあまり読まない)読まないのがイカン。これから私も中原先生の講座を勉強することにしよう」。ということで米長十段も読むようになった中原名人の本誌講座からの質問です。

(以下略)

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中原誠十六世名人が”今月の私の講座”と言っているのは、将棋世界で連載されていた「現代矢倉を探る」。

これから3年後、全日本プロトーナメント決勝第3局〔谷川浩司名人-羽生善治竜王戦〕で、羽生竜王がいろいろ考えた末に苦心して見つけた攻め方が、実は「現代矢倉を探る」に既に載っていたことも、羽生竜王の自戦記に書かれている。

(注:プロは他人の講座はあまり読まない)とあるように、やはり羽生竜王も、

中原先生の講座は目を通してはいたが、そんなに注意深くは読んでいなかった。これからは一字一句を見落とさないぐらいにしなくては。もっとも谷川先生も知らなかったそうなので、それを聞いて少し安心した。

と書いている。

羽生竜王と谷川名人(当時)の”灯台下暗し”