八方桂1枚が(大駒1枚+香車1枚)の手合

将棋マガジン1992年10月号、「将棋おもしろ雑学事典」より。

◯八方桂

 八方桂(1図)は、駒落ちの四枚落ちと同じように飛角香を落として並べ、八方桂側を先手とする。

 普通のルールと違い、先手の桂は八方にとぶことができ、チェスのナイトの性能と同じ。成り込んだ場合は、八方桂プラス成桂(金)の性能をもつ。正規軍の桂馬はすべて普通の桂馬。

 この八方桂はすでに江戸時代には指されていたらしく、明治末に坂田三吉と木見金治郎との間で指された珍しい実戦譜も残されている。平手同士の力で、ほどよい勝負になるという。

◯獅子王

 獅子王(2図)とは勇ましい名前だが、もとは中将棋の駒の働きから発生している。

 初形は獅子王側が玉と歩だけ。正規軍は普通の形で、獅子王側を先手とする。

 獅子王側は、前後、左右、斜めの周囲各2格ずつ(計24ヵ所)に動くことができる。そのうえ周囲8格は居喰い(当たった敵の駒を居所を動かさずに取ること)・飛び越しもできるというすさまじさだ。

 獅子王の駒の動きは、中将棋の獅子駒と同じ。その中将棋は第二次世界大戦前までは関西地方を中心にかなりの愛好者がいた。

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変則将棋(フェアリー)で有名なのは安南将棋(味方の駒同士が縦に隣接した場合、前の駒は後ろの駒の動きに変化する)だが、八方桂と獅子王は知らなかった。

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1図でよい勝負ということは、八方桂2枚と(飛、角、香2枚)の価値が等しいということ。

八方桂は想像以上に強力なようだ。

成り込んだ場合に八方桂プラス成桂になるのも、恐怖としか言いようがない。

私は飛車が大好きだけれども、これは八方桂側を持って指してみたくなる。

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獅子王も恐ろしそうだ。

2図から、例えば▲4八玉△3四歩▲6六歩△4四角▲2六歩が変化の一例だろうか。

かなり疲れそうな将棋になるのだろう。

これは獅子王側、正規軍側、どちらも持ちたくないような感じがする。