傷心を癒す旅に出て10キロ太った田村康介三段(当時)

将棋マガジン1993年7月号、駒野茂さんの「スポットライト奨励会」より。

 第13回の三段リーグが新緑の香り漂う中スタートし、すでに4戦を消化した。

 今回筆者が特に注目しているのはタムリンこと田村康介。

 こう言うのには、ちょっとした理由がある。

 前回14勝4敗という好成績をあげながらも次点に泣いた田村。リーグ終了直後に旅に出たことは5月号に書いたが、旅から戻って来て見たら顔がプックリとしていて、これには驚いた。

 傷心を癒やす旅なら物思いに耽ってゲッソリとして帰って来る姿を思い浮かべていたのに、その逆に、約10キロも太ったというのだ。

 その神経の図太さから本命と見たのである。

 2連勝、2連敗と波の荒い出だしも、本人いわく

「行方に負けたら頭がバーストして、次の将棋は手だけが動いてました。もう冷静になります」と。

 18局の長丁場、ペースは自分で作るものであり、冷静さを取り戻した気配ある田村の今後を期待したい。

1987年小学生名人戦。優勝した田村康介少年と準優勝の北浜健介少年。(将棋マガジン1987年6月号より、撮影は中野英伴さん)

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「前回14勝4敗という好成績をあげながらも次点に泣いた田村。リーグ終了直後に旅に出たことは5月号に書いたが」

この辺の経緯は、先日の記事に載っている。

田村康介三段(当時)「勝っても報われずか。旅に出るか」

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「傷心を癒やす旅なら物思いに耽ってゲッソリとして帰って来る姿を思い浮かべていたのに」

逆に、ストレスが原因でかえって食べてしまうケースもあるが、まだ17歳の田村康介三段(当時)なので、頼もしいほど神経が図太いと言うほうが正しいだろう。

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「行方に負けたら頭がバーストして、次の将棋は手だけが動いてました」

この期の三段リーグは、1位が田村三段で2位が行方尚史三段(当時)。

今期初黒星を喫したことと、2位の行方三段への対抗意識からバーストしたと考えられる。

奨励会入会も年齢も先輩の行方三段を呼び捨てにするのだから、やっぱり図太くて頼もしい。

周りから期待されるのも、とても理解できる。

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この期に四段に昇段するのは、行方三段と岡崎洋三段(当時)。