羽生善治六冠「一日一善」、森内俊之八段「ホームラン王」

将棋マガジン1995年9月号、「第54期順位戦」より、「今年度の目標」からのトピックス。

羽生善治六冠 一日一善

中原誠永世十段 無冠返上

米長邦雄九段 30人(勝)斬り

谷川浩司王将 最優秀棋士

加藤一二三九段 健康に留意

森内俊之八段 ホームラン王

佐藤康光前竜王 将棋のレベルアップ

神谷広志六段 佐藤工務店の社長に腕相撲で勝つ

藤井猛六段 たくさん勝つ

郷田真隆五段 昨年度できなかったことを達成する

屋敷伸之六段 垣内清美選手と知り合う

三浦弘行五段 昨年度よりも将棋が強くなる

深浦康市五段 何か結果を残す

窪田義行四段 とにかく目立つ

先崎学六段 よく学び、よく遊ぶ

行方尚史四段 ’95タイトル奪取作戦

杉本昌隆四段 イメチェン

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羽生善治六冠の「一日一善」は、ジョークなのか本気なのか判断がつかないほどの大きなインパクト。

中原誠永世十段の「無冠返上」は、本当に思いがこもった目標。

米長邦雄九段の「30人(勝)斬り」は、米長永世棋聖らしい表現。

谷川浩司王将の「最優秀棋士」。これは羽生六冠から複数のタイトルを奪取するという宣言と同じ意味になる。

加藤一二三九段の「健康に留意」。A級在籍なのでもっと野心に満ちた目標を持っても不思議ではないのに、そのような中での「健康に留意」。このような積み重ねがあったからこそ、最年長の大記録をいくつも打ち立てられたのだと思う。

森内俊之八段の「ホームラン王」。将棋連盟野球部での話なのかもしれないが、そうではない可能性もある。この当時、東京・自由が丘の亀屋万年堂の「ナボナはお菓子のホームラン王です」というテレビ広告があり、そのように考えると、もっとわからなくなる。

佐藤康光前竜王の「将棋のレベルアップ」。竜王を失冠してのリベンジの気合いが感じられる。

神谷広志六段の「佐藤工務店の社長に腕相撲で勝つ」は神谷八段らしさが満開。

藤井猛六段の「たくさん勝つ」。藤井猛六段は、この年度に婚約を発表して、藤井システムも誕生させる。

郷田真隆五段の「昨年度できなかったことを達成する」。JT杯日本シリーズを連続優勝している郷田五段。昨年度できなかったことは、タイトル獲得と順位戦昇級。

屋敷伸之六段の「垣内清美選手と知り合う」。垣内清美選手は競艇の選手。現在も活躍している。

三浦弘行五段の「昨年度よりも将棋が強くなる」。この年度は棋聖戦でタイトル戦初挑戦、翌期は棋聖位を獲得する。

深浦康市五段の「何か結果を残す」。全日本プロトーナメントなどの棋戦で優勝の実績を持つ深浦五段。次の目標はタイトル獲得。

窪田義行四段の「とにかく目立つ」。この当時はSNSや中継などない時代なので、とにかく棋戦で活躍して目立ちたいということとなる。

先崎学六段の「よく学び、よく遊ぶ」。この期、先崎六段は竜王戦挑戦者決定戦に進出するとともに、C級1組へ昇級を決めることとなる。

行方尚史四段の「’95タイトル奪取作戦」。この設問に限らず、行方四段の回答はエンターテインメント性に溢れている。

杉本昌隆四段の「イメチェン」。盤上のことと日常のこと、両面での決意なのかもしれない。