屋敷伸之七段(当時)「世の中に絶対はない。よくわかっているつもりなのですが、絶対に◯◯だとか言うと必ず逆のことが起こって頭を抱えることがよくあります」

将棋世界1996年8月号、屋敷伸之七段(当時)の「プロの視点」より。

近代将棋1996年7月号より、撮影は弦巻勝さん。

 世の中に絶対はない。よくわかっているつもりなのですが、絶対に◯◯だとか言うと必ず逆のことが起こって頭を抱えることがよくあります。

 先日、友人宅に何人か集まって競艇のレース中継を見ていました。ちょうど、笹川賞の準優勝戦の日で、番組的にはいちばんおもしろいところです。その日もずっと番組を見てまして9レースまで終わって、10レース目準優勝戦の第1弾が始まろうとしていました。普段ならみんなだまって券を買うのですが、うかつにもその日は私が予想をしゃべってしまいました。なぜいけないかというと、人が言ったのをあえてはずして買う奴が出てきて、それがまたなぜかよく当たるのでみんなまねするようになって、そのうち何も言う人がいなくなったというような感じです。

 ところが、その日はそんなことも忘れて調子に乗ってしゃべっていたら、みんながいろいろと聞いてきます。どれが来るとか、来ないとかそういうことを聞いてくるので、思わず6は絶対に来ないと言ってしまいました。本当に本当に来ないですねと聞かれて、来るわけがないと断言したところ、友人は密かに1-6の券を買い足していました。

 レースが始まりまして、1がまくって楽勝態勢になりましたが、2着を5と6で競っていました。私は見ていてとんでもないことになったと思いました。6は絶対に来ないと言った以上来てもらっては困るのです。頼むから1-6にだけはならないでくれとテレビの前で大声を張りあげたのですが、2周目に6が5を逆転して、1-6になってしまいました。

 私はしばしぼうぜんとなっていたのですが、友人達は声をかみ殺して笑っています。一人にはお礼を言われて(1-6を買っていた)もう一人はすごい才能だと感動しながら笑っていて(確かに自分でもすごいと思った)みんなを喜ばせてしまいました。もう、しばらくはこういうことは言わないでおこうと思ったのですが、また次のレースについて聞かれて、こりずにペラペラとしゃべってしまいました。

 まあ、予想が当たらないのが競艇をやっているときだけでしたらいいのですが、最近では将棋の解説の方までそういう傾向になってきているので危なく感じています。

 今回から穴熊に対する指し方を研究していく。振り飛車穴熊に対しては一番よく指されているのは銀冠だが、今回解説する型は▲6六角と出て端を直接狙っていく指し方である。

(以下略)

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「世の中に絶対はない。よくわかっているつもりなのですが、絶対に◯◯だとか言うと必ず逆のことが起こって頭を抱えることがよくあります」

選択肢が2つしかないことについて、予想したことと必ず逆のことが起こるなら、それはそれで的中率100%と同じ意味になる。

絶対に当たらない占い師がいたとして、その占い師が「この株は絶対に上がらない」と言ったなら、その株を買えば絶対に利益を得ることができる。

しかし、選択肢が3つ以上ある条件下では、絶対に当たらない人の有り難みは、選択肢が増えれば増えるほどどんどん減っていく。

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競艇は6枠なので、「◯は絶対に来る」と言われるよりも、屋敷伸之七段(当時)が話した「6は絶対に来ない」のような予言のほうが有難がられるということになる。

ただし、競艇は2連単・複、3連単・複などがあるので、その中でどう賭けるかは屋敷七段の友人達の腕の見せ所。(単勝で6を買っていたら当たっていなかった)

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こうやって見ると、友人宅に集まっての競艇観戦、かなり楽しそうだ。

 

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