米長邦雄九段「いまも夢は『A級八段』になることだ。A級八段とは、若くて、実力があり、夢があり、目の前に名人位があることだ」

将棋世界1996年12月号、高林譲司さんの「思い出の戦場 米長邦雄九段〔京王プラザホテル札幌〕『引退を賭けた将棋』」より。

将棋世界1996年12月号より、撮影は中野英伴さん。

 米長九段独白=<前進と後退もしくは停止>について語ろうと先にいった。まず前進についてだ。

 このページは「思い出の戦場」というタイトルがついているが、私は思い出という言葉が嫌いでね。いまも夢は「A級八段」になることだ。A級八段とは、若くて、実力があり、夢があり、目の前に名人位があることだ。現在のA級八段は、森下、佐藤、森内、村山、そして少しトウがたったが、島と、この5人しかいない。私はこの仲間入りをしたいんだ。

 いまはA級に上がらずとも九段になれる。九段とは馬齢を重ねることでしかない。長生きさえすれば、大幅に負け越しても九段への道が開けている。私はいま我慢して九段を名乗っているが、心からA級八段になりたいと思っているんだ。 いや、本当は18歳の四段になりたいんだ。

(以下略)

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若いということの輝き、素晴らしさを強く感じさせられる。

心を打たれるコメントだ。

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「いや、本当は18歳の四段になりたいんだ」

藤井聡太二冠は、来期の棋聖戦をストレートで防衛すると、18歳で九段に昇段する。(ストレートでなく防衛した場合は19歳九段となる可能性が高い。現在の九段昇段最年少記録は渡辺明名人の21歳)

米長邦雄永世棋聖が生きていたら、どのように感じていただろうか。