深浦康市王位と宮田敦史五段の7年前のエピソード。
将棋世界2002年10月号、故・真部一男九段「将棋論考」より。
真部九段は、前の年の10月に四段に昇段した宮田敦史四段のことを高く評価していた。
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何日か後、記者室桂の間で深浦康市七段と宮田が食事をしていた。食後、深浦が宮田に声を掛けた。「今度、将棋を教えていただけませんか」その丁寧な口ぶりにもびっくりしたが、宮田の対応には更に驚いた。Aクラス入り間近の優れた先輩の申し出に、宮田は全く気後れなく悪びれず、てきぱきとこの日はダメでこの日は良いとごく自然に振舞っていた。
普通こういった場合、新人は恐縮してしまうものだが、良い意味で鈍な所があるのだろう。ケレンのないのがいい。
気に入った掘出し物が、深浦鑑定士のお墨付きをもらったようで、当方内心胸を張った。
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深浦七段の向上心と謙虚さ、宮田四段の自然体。
将棋界ならではの、とてもいい話だと思う。
それにしても、「将棋論考」を読み直してつくづく感じることだが、真部一男九段が亡くなったのはあまりにも惜しい。