どこまでが誤植なのかを判断するのが難しい記事

将棋世界1986年7月号、沼春雄五段・編集長(当時)の編集後記より。

 先日、本誌の46年8月号を見ましたら”小学一年生で初段”という見出しで小さな記事が載っていました。

 初段コースを卒業したそうなのですが、名前を見ると岩川浩司君(9歳)となっていました。

 どうも現棋王のようなのですが、それにしては初段まで24ヵ月と長すぎたようですし、9歳で小学一年とは少し異常。いったいこの中に何箇所の誤植があったのでしょうか。

(以下略)

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将棋世界1971年8月号、若松政和四段(当時)の「小学一年生で初段」より。

 私の教室に岩川俊昭、浩司の両少年が通っています。兄が13歳、弟が9歳(小学1年生)ですが、このほど弟の浩司君が初段コースで見事1200点(23回目)を獲得しました。往復ハガキの表書きから解答まで全部自分で書いています。(ハガキを見るまでは誰かが代筆されているものと思っていました)

 棋質も豊かだし、2年近くの努力と頑張りは大したものだと感心しました。初段コースを現在めざしておられる方々や年少者のはげみになればと思いお報せした次第です。

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この将棋世界1971年8月号で明らかな誤植なのは、

  • 小学1年生→小学3年生
  • 岩川→谷川

の2点。

それ以外に誤植があるのかどうか、考えてみたい。

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「このほど弟の浩司君が初段コースで見事1200点(23回目)を獲得しました」

この当時の将棋世界の初段コースは1回が3問で100点満点。最速でも初段になるのに1年かかる。(1986年当時および現在の初段コースは最速で2ヵ月)

谷川浩司九段が将棋を覚えたのが5歳の頃。

羽生善治棋聖の場合を見てみると、

  • 将棋を覚えたのが小学1年(6歳か7歳)の時
  • 八王子将棋クラブで8歳の春に5級、9歳になった頃に初段

谷川浩司九段、羽生善治棋聖とも9歳でアマ初段ということは、谷川浩司少年が将棋世界の初段コース23回で初段は大いにありうる回数と言えるだろう。

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谷川浩司少年は、この翌年1972年5月5日の子供の日にNHK教育テレビで、北海道の兼田睦美さん(中学2年、現在の福崎文吾九段の奥様)とのチビッ子対局に出演している。

谷川浩司少年が奨励会に入ったのは1973年、小学5年の時のこと。

羽生善治少年は、10歳で四段、11歳で五段になり、奨励会に入るのは1982年、12歳(小学6年)の時。

このように見ると、小学4年から急速に棋力が伸び始めるとも考えられる。

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ちなみに、将棋世界1971年8月号の「小学一年生で初段」は、沼春雄奨励会二段(当時・第一回高校選手権大会個人戦優勝)の「高校生の季節」と同じページに載っている。

沼春雄五段(当時)が昔の自分が書いた記事を読んでいる時に発見したのだろう。