振飛車名人、故・大野源一九段の名局シリーズ。
1963年A級順位戦、升田幸三九段(先)-大野源一八段戦。
角頭への攻撃を軽くかわす名人芸。
はじめは三間飛車の出だしだが、中飛車にして5筋から局面を動かそうという構想。
△6四銀と出てからの△5五歩が大野流中飛車。
以下、▲同歩△同銀▲5六歩△6四銀▲6六銀△5一飛▲3八飛△5四金。
▲3八飛と、3筋に狙いをつけられたにもかかわらず、角頭を守る4三の金が5四へ飛び出た。
「明日、泥棒に入りますよ」と言われて「それなら明日、家を留守にしておきます」と言うような手だ。
以下、▲3五歩△同歩▲同飛△4五歩。
この局面での△4五歩が大野八段自慢の一手。
▲同歩だと△3四歩▲同飛△4五金で、後手の捌きに勢いが出る形になるので、升田九段は▲3七桂。
以下、△4六歩▲同銀△4四金。
ここで▲3六飛と下がると、△5六飛の後の△3五金などを狙われたりして厄介なので▲3三飛成と飛車を切る。
以下、△同桂▲5七銀△5五歩▲4二角△3六歩▲5一角成△同金▲ 3一飛△6二角▲3三飛成△3七歩成▲同竜△4五桂。
振飛車が十分に指せる形勢。
この将棋は130手で大野八段の勝ち。
3筋からの攻撃を軽くかわした技が印象的な一局。