昨日の日レスインビテーションカップの中継で、蝶結記者が久々にその奥義を見せてくれた。
午前の藤森奈津子四段-鈴木悠子アマ戦では、スポンサーである日本レストランシステムの「洋麺屋五右衛門」ワールド。
午後の渡部愛TJP-成田弥穂アマ戦では、日本レストランシステムの「モーツアルト」ワールドというか 「女子高生スイーツ」ワールド。
それぞれを振り返ってみたい。
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洋麺屋五右衛門ワールド
蝶結記者は、対局開始早々から奇手を放ってきた。
三間飛車+美濃囲いは藤森四段の得意メニュー。定番のペペロンチーノは、カニ・海老・本からすみを使っていていつも新鮮
一瞬意味がわからなかったが、数手を経て、日本レストランシステムの「洋麺屋五右衛門」のメニューにからめる世界なのだと理解した。
私はすぐに洋麺屋五右衛門メニューのページへと向った。
ここで書かれたペペロンチーノは「カニと海老と本からすみのペペロンチーノ 」だ。
本からすみに新鮮さが求められるのだろうかと思う間もなく、
この手までで鈴木アマは10分を消費している。序盤から一手一手かみしめるように慎重に進める。しっかり味わうように。
蝶結記者にはかなり気合が入っているようだ。
相手の穴熊を見て、それならと銀を出て押さえ込もうといういい意味で欲張った手。夏野菜のよくばりスパゲッティーは、具だくさんでさまざまな狙いを秘める。
「夏野菜のよくばりスパゲッティー」は季節限定メニューで、「ゴーヤ、枝豆、トマトなどの夏野菜をふんだんに使った具だくさん。醤油バター風味に温泉卵を混ぜてまろやかに」とある。
穴熊で玉を戦場から遠ざけつつ、中央をけん制して攻めも絡める。海老とアボカドとほうれん草のジェノバ風は、バジルがパスタとよく絡まって香り高い。
これは「海老とアボカドとフレッシュハーブのジェノバ風」のことだ。
次々とカチャリとぶつけて戦端を開く。ボンゴレ・ビアンコはあさりの貝殻のかちゃりと鳴る音も楽しく、味も上質。
ボンゴレ・ビアンコ(オリーブオイル) だ。
私は個人的には、貝殻を取り除くのが面倒なので、今まで一度もボンゴレは頼んだことがない。
素直に交換に応じて局面をさっぱりとさせる。明太子と海老としめじの青じそ風味は、和テイストでヘルシー感もあり何杯でも食べられそう。
よくここまでこじつけることができると、感心してしまう。
じっくりと力をためる。秒読みになっても鈴木アマはまったくあわてた様子はなく、煮込む時間を正確に測っている。
これはうまい。
軽快なフライパン使いは藤森四段の真骨頂。地中海風 海老とあさりのスープスパゲッティーはスープと麺の相性が抜群で、見た目よりもツルツルいける。
「地中海風海老とあさりのスープスパゲッティー」はトマトクリームスープ。
昼前だったので、本当に食べたくなってくる。
この跳ね出しが爽快だ。日曜の午後は、パスタにビールが最高の組み合わせだろうか。
私はこのコメントを見て、午後からウイスキーと冷奴で観戦をすることになる。(パスタもビールもなかった)
ここから簡単に崩れない粘りが鈴木アマの持ち味。冷製月見とろろスパゲティーは、誰の食欲も満たす充実の味。
「冷製月見とろろスパゲティー」も季節限定メニュー。とろろをたっぷりかけた冷製スパゲッティーで、鶏肉、おくら、卵の黄身をトッピング。
奥深く逃げ込んで、なんとかシメとしたい先手。混雑するランチタイム前には帰りたい。
これは、とても気持ちがわかる素晴らしい表現だ。
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「洋麺屋五右衛門」には、ここに出てきた以外に30種類のメニューがある。
私が好んで注文しそうな、「5種類のベーコン・ソーセージ・サラミのピリ辛トマトソース」、 「カルボナーラミートソース温泉卵添え」、「モッツァレラチーズと黒豚粗挽きソーセージのナポリタン温泉卵添え」への蝶結記者のコメントも、いつかぜひ見てみたい。
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女子高生スイーツワールド
私は、この世界が蝶結記者の「表芸」なのではないかと睨んでいる。
渡部TJPはおなじみの紺色のハイソ。成田アマは白のソックスでともに清潔感十分。どこに出しても恥ずかしくない乙女のまっすぐさが、そこにはある。
これこそ蝶結ワールドの原点だ。水戸黄門であれば印籠を出す瞬間。これが来なければ視聴者が納得しない。
これで穴熊が完成。このお菓子の家は、なかなか立派でそう簡単には崩れない。
ここから見はじめると一瞬不思議な感覚になるが、午前中も見ていると、「今度はこうくるか」となる。
そちらが穴熊なら、こちらは堂々とこの端歩を伸ばしてプレッシャーをかける。しっかりとした味付けは、硬質なザッハトルテを思わせる。
ザッハトルテは、オーストリアの代表的な菓子(トルテ)であり古典的なチョコレートケーキの一種。
渡部TJPの手にはピンク&ブルーのハンカチがあり、ピンクの部分にはうさぎのデザインが顔をのぞかせている。慎重に、でもいざとなったらピョンピョン跳ねて草原を駆け抜けようと夢見ている。
蝶結記者による渡部TJPのハンカチのコメントは、毎回涙が出るほど絶妙だ。
前回(天河戦)はこうだった。
「渡部TJPは手元にあるミッキーのハンカチを時折握りしめる。パワーをもらって、夢の王国を築きたい」
角には角で。ショートケーキの上にはイチゴ。常道をしっかり走って間違えることはない。
ショートケーキの上にミカンというのも、なかなか悪くない。
ここで弱い桂先に狙いをつける自然な手。先ほどから渡部TJPは時折前後に軽く揺れながら盤面を見詰める。これも読みに耽る時の彼女のポーズ。
対して成田アマはほとんど動かず読みを入れている。渡部TJPが苺の乗ったレアチーズケーキなら、成田アマはしっとりのベイクドチーズケーキだろうか。
これは素晴らしい表現だ。
手に乗って自然に飛車浮き。彼女のつくるメレンゲはキメが細かく、ムダな甘さがないのが味の秘訣。
これも成田アマの棋風をうまく表現している。
この歩がしっかりとした受けで渡部TJPの成長の跡がうかがえる。バナナチョコモンブランは、繊細な中にもしっかりと響く味わいがある。
成田アマの中飛車は、鍛えの入った職人気質を感じる。モーツアルトのプリンは、ジャージー牛乳と地卵を使ったこだわりの味。
蝶結記者絶好調だ。
渡部TJPはハンカチを口元にあて押さえ込む得意のポーズが見られる。いたいけな表情とは裏腹に、ここからの彼女は細い腕から力強い手を繰り出す。全国のファンは目が離せない、席から離れられない。
このコメントもなかなかいい。
この駒音はひときわ大きく時間もほとんど使わなかった。あとはセットのジュースを飲み干すだけだ。
終局までの距離感がよくわかる。
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蝶結記者が次回どのような世界で中継するのかが見逃せない。
この時期なのに、ワールドカップの世界にしないところが立派だ。